コロナで医療崩壊しかねない日本の医療の弱点 日本の入院日数はOECD平均よりなぜ長いのか

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地域医療構想では、医療資源投入量が多い順に、病床機能を4段階に分けている。高度医療を必要とする患者を「高度急性期」の病床で受け入れても、「急性期」を経過し、在宅復帰に向けて「回復期」に移行して退院する。4つめの「慢性期」は長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能を担うものとされている。

回復期に期待されているのは在宅復帰、つまり退院である。ところが、地域医療構想で不足しているのが回復期の病床だ。高度急性期や急性期の病床は数多くあるが、保有する病床を「回復期」としたがらない病院が存在するようだ。

回復期の病床の機能は在宅復帰

回復期は高度急性期や急性期の病床よりも医療資源投入量が少なく、それだけ医療費は少ない。患者がそれだけ快方に向かっているわけだから、当然だが、病院経営からすれば、収入(単価)が少ない病床をできるだけ担いたくないのは人情だろう。

とはいえ、地域医療構想は、医療資源投入量でみて入院が必要な患者がその地域に何人いるかをレセプトデータなどに基づいて推計している。病床稼働率も9割前後と設定し、一定の空きベッドも容認する形で余裕を見て策定されている。患者に必要な医療資源投入量が回復期の医療資源投入量より下回るならば、在宅復帰させるのが回復期の機能である。

当面は、新型コロナウイルスの収束を目指すのが最優先だ。その過程で患者の病状に応じた病床機能の分化と連携を図る知恵が医療現場で見出されれば、感染が収束した暁には日本の医療は2025年に向けてよりよいものになっていくだろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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