売上高に下押し圧力がかかる一方、固定費負担も重石になっている。休園で食材費などの変動費が抑制されるが、人件費や巨大なアトラクションの減価償却費などの固定費負担が重くのしかかる。
今回のコロナショックと類似する時期としては、2011年に東日本大震災が発生し、期末にかけてテーマパークを20日間休園した2011年3月期が挙げられる。当時は休園期間の人件費や減価償却費など53億円の固定費が「災害による特別損失」として計上された。つまり、1日当たり2億6000万円程度の固定費が発生していたことになる。
2019年3月期の人件費と減価償却費の合計は当時と比べて9.3%増加しており、これを加味すると、1日当たり2億8000万円程度の固定費が発生し、損失となっているとみられる。会社が予想している2020年3月期の当期純利益762億円は、収入減の影響のほか、32日間分の休園期間の固定費90億円程度が加わり、下方修正要因となりそうだ。
特筆すべきキャッシュの充実ぶり
安倍晋三首相が3月28日の会見で、「(新型コロナウイルスが)いつ急拡大してもおかしくない。長期戦を覚悟する必要がある」と発言したように、4月中にイベント自粛要請が解除される見通しは立っていない。では、ドル箱であるテーマパークの売り上げを欠いたまま、オリエンタルランドはどこまで事業を継続できるのだろうか。
そんなオリエンタルランドの「対コロナ持久力」を見定めるうえで重要なのが、短期的な債務の支払い能力だ。1年以内に現金化できる流動資産がどの程度確保されているかを見る流動比率(流動資産/流動負債×100)は、2019年12月末時点で302.9%。理想とされる200%を大きく上回っており、良好だ。「富士急ハイランド」などを運営する同業の富士急行が同162.0%、よみうりランドが90.8%であることと比べても、圧倒的に盤石な手元流動性を誇っている。
オリエンタルランドの財務で特筆すべき点は、キャッシュの充実ぶりだ。2019年12月末時点の現金及び預金残高は3291億円。月当たり売上高(約433億円)の7.5カ月分に相当する。同じく富士急行は3.4カ月分、よみうりランドは2.2カ月分にとどまる。
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