ニューヨーク「コロナ禍」直撃した都市のリアル 在住邦人7人が語る医療、経済、生活、教育

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筆者:ニューヨークに限りませんがアメリカでは大量の失業者が発生しています。職種や雇用形態にもよりますが、何らかの形で経済的ダメージを受けている人がほとんどです。

ユミさん(学生):コミュニティ・カレッジの学費を稼ぐため、シッターとして働いていたのですが、ケアしていた子どもの学校は休校、親はリモートワークとなり、シッターは不要とのことでいったん、無職になりました。レストランやヘアサロンで働いていた友人たちも、収入源がなくなり、夢をあきらめて日本に帰国した人もいます。

エリサさん(大学職員):私の夫が勤務するホテルも閉鎖が決まり、夫を含む従業員のほとんどがいったん解雇されました。本人は、「ホテル側は、このまま全員クビにして、若くて給料の安い従業員に総入れ替えするのでは?」と心配しています。

失業仲間がたくさんいて、支え合えているのが唯一の救いです。リフォーム会社に勤める私の弟2人も仕事がなくなり、揃って失業保険を受けることになりました。正直、コロナに感染するということももちろんそうですが、生活できない不安は現実的にはるかに大きいです。花屋に勤める友人も無職になり、レストランを経営する友人は、売り上げが一気に減ったそうです。

失業保険が出るので解雇してくれたほうがいい

ナツヨさん(プロスピーカー・戦略コンサルタント):うちは夫婦とも自営業なので、大企業の社員のように「とりあえず給与はもらえる」という状況にはありません。夫のデンタルクリニック(歯科医院)はクローズし、夫は急患があるときのみ、片道1時間歩いて出勤しています。収入は急患の診療分だけなので、悩んだ末にパートタイマー2人は解雇、フルタイマー2人には、25%の減給を提示せざるをえませんでした。うち1人には、「失業保険がもらえるので解雇してくれたほうがいい」と言われています。

私は、プロフェッショナル・スピーカーとしての登壇の仕事はなくなっていますが、日本の顧客へのコンサルやコーチングの仕事で、夏までは収入が確保できています。とはいえ、アパートの住宅ローンとメンテナンスフィー、夫のクリニックの賃料、私のオフィスの賃料、子どもの教育費などをカバーすることはできないので、心配はつきません。

ミギワさん(ピアニスト、コンポーザー、プロデューサー):私は日本で2011年3月の東日本大震災を経験し、日本での音楽の仕事をすべて失う経験をしました。今回は世界規模なので、海外ツアーをしていたようなミュージシャンも仕事を失うなど、スケールが違います。

ブロードウェイが閉鎖した3月12日には、音楽業界にも衝撃が走りました。私も、5月末まで予定されていたアメリカ、オーストラリア、日本での仕事がすべて飛び、約1万ドル(約107万円)の収入見込みが消えました。それでも、私自身はニューヨーク市のアーティスト助成プログラムで受賞経験があり、助成金をいただける立場ですし、アーティストをサポートするNPOからも支援金をいただくなど、恵まれていると思います。

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