コロナで孤立「妊産婦」の不安に答える無償の手 助産師110人がネットで相談会&両親学級開催

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愛知県刈谷市の助産師・杉浦加菜子さんの下にも、同様の声が続々と集まっている。杉浦さんは出産や子育てに苦労した自らの経験も踏まえ、2019年1月、「じょさんしonline」を立ち上げた。「世界のいつどこにいても 安心して妊娠出産育児できる社会」の実現を目指し、仲間の助産師・保健師ら8人で活動を続けている。

杉浦加菜子さん(写真:本人提供)

その杉浦さんがInstagramで「コロナの影響で困っていることは?」と質問を投げ掛けたのは、3月27日のことだ。安倍晋三首相の要請によって、全国の小中高等学校のほとんどが学年末までの臨時休校に入り、それを機に全国で自粛ムードが一気に広がっていた。病院や行政が行う母親学級・両親学級などは中止され、児童館や子育て広場なども閉館。多くの妊婦や母親たちは対面での相談機会や交流の場を失った。

家からほとんど出ていない

生後2カ月の乳児を持つ大阪府在住の前田玲子さんは、人混みを避けるため、里帰り出産をした埼玉県から大阪まで車で戻った。以来、家からほとんど出ていない。「赤ちゃんは、うがいもマスクもできない。週末に外出を自粛しても夫は平日ラッシュの中を通勤しているし意味がない」と打ち明ける。

おそらく、全国で多くの妊産婦はそうした状況に置かれている。

「困ったことは?」との問いを投げ掛けた杉浦さんのInstagramにも、「母親学級がすべて中止になってどうしていいのかわからない」「離乳食講座がなくなった。離乳食どうしたらいいんだろう」「児童館も子育て広場も閉まっているので、直接、情報交換をする場所がない」といった不安の声が続々届いた。

子育ての問題に詳しい関西大学の山縣文治教授は、妊婦や母親たちの置かれた状況をこう解説する。

山縣文治・関西大学教授(撮影:長瀬 千雅)

「(外出できない状況が続くことで、こうした女性たちの)ストレスが高まることは間違いないでしょう。それが親子関係に何らかの影響として出る可能性が高い。福島第一原発の事故の際の、汚染エリアにとどまった親子の状況と似てくるかもしれません。お母さんたちが抱え込んで精神的に参ってしまった。それでも、あのときは(遠出していろいろな人と交流するなど時々は)逃げることができた。今は日本中、コロナ。逃げ場がまったくなく、先が見えない。この2つが同時に起こるというのは、経験したことがありません」

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