経営陣の理解も進んでいる
2点目は、優秀な人材の維持確保、つまり選ばれる会社になることの重要性が増していることがある。現在、新卒後3年以内に会社を辞める人材が3分の1を占める。要因のひとつに挙げられるのは、“自分が社風とマッチしない”ということ。これは裏返せば、“現在の社風が硬直的で自分を受け入れてくれない”ということでもある。ハラスメントは“自分を受け入れてくれない”ことの象徴である。違いを受け入れ、取り込む力を会社が持っていないことを示している。
3点目は、ハラスメントは会社が抱える問題の氷山の一角で、現在の社風が抱える問題を象徴していることが多いという理解が経営陣の間で進んできていること。経営陣が想定していない社風の悪化が顕在化したのが、ハラスメントと考えるようになったのだ。
セクハラというと当初は、男性社員から女性社員へのハラスメントに焦点が当たっていた。男性が加害者で、女性が被害者という構図である。しかし、企業は実際に人事ポリシーを作っていく中で、当然、男性社員にもさまざまなタイプがいるということに気がついた。恒常的にハラスメントを繰り返す社員もいれば、意識が高い社員もいる。会社のシステム、業種によってもいろいろな対応が求められる。“男性”にくくらない柔軟な対応が、上記の3つのポイント、つまり潜在的な力が発揮でき、違いを受け入れ、経営陣が目指す社風が実現する職場を作るうえで不可欠である。
“男性”“女性”ということを考えたときに、今まで無視されてきた存在がある。それは、日本の人口の5%と言われる性的マイノリティ、たとえばこの“男性”社員の例でいえばゲイの社員の存在である。実は、日本企業が今まで沈黙してきた性的マイノリティに注目することは、誰にとっても『潜在的な力を発揮し、違いを受け入れる』職場を実現するうえで、象徴的な指標になりうる。会社の新しい時代のポリシーとして、『ダイバーシティを強みにする』ことが提唱されても、それが一律の“女性”の活用という、女性の多様性を無視した政策であれば、ただのお題目に終わってしまう。“男性”“女性”、またそのどちらにも当てはまらない人がいるということを認識して初めて、セクハラの起きない職場が実現する。結果として、各社員が潜在的な力が発揮でき、それぞれの違いを受け入れ、経営陣が目指す社風が実現するだろう」