直感型の天才が打算と地味な努力にこだわる訳 起業家4人が本音で語る「日本のサードドア」
一般に、小さな会社のほうが悩みが深い。でもそこに道があるんです。「アンテナ」の事業は、まずは小規模のメディア60社に電話をかけて、49社からOKをもらってスタートしました。
そのときに多くの会社からうかがったのが、「記事を勝手にパクられて本当に困る」ということでした。僕たちはそんなことがないように、1社ずつきちんと契約を交わして、仲間になっていきました。すると、その考えに共鳴した中堅、大企業が連絡をくれるようになったのです。
家具も同じです。最初は目黒通りにある家具屋さんから話を聞いて、問題を把握しました。モラルの低い会社が自分たちのデザインをパクって、中国の工場で同じものを10分の1の値段で作って売ってしまうというのです。これはおかしい、と思いました。だから、いいものを作っている弱い立場の人の目線に立つことにしたんです。そこが僕たちの強みになりました。
近藤:軽視されがちな小さな会社と仲間になるという視点が、町野さんのサードドアですね。「バベル」の杉山さんは、中国最大級のプラットフォーム「RED(小紅書)」から、日系企業として初めてMCN(マルチチャンネルネットワーク)として公式ライセンスを取り、サービスを提供しています。これは驚異的なことです。どのようにしてドアをこじ開けたのですか?
杉山大幹(以下、杉山):MCNとは、デジタルの芸能事務所のようなものです。芸能人の活動を支える芸能事務所のように、僕たちは日本の大企業が海外事業をする際のサポートとなるという立ち位置で、特に日本のコスメメーカーが中国展開をする際の手助けをしています。
企業が海外展開をする際、かつては総合商社が流通網を使って中国現地の百貨店に卸すのがパターンでしたが、今は個人がスマホで製品を認知してスマホでそれを買う時代です。
そこで、日本製品や日本文化について発信している中国人KOL(キー・オピニオン・リーダー)、いわゆるインフルエンサーをマネージメントする仕組みを作り、「RED」の公式認定パートナーを目指しました。
最初は、今は当社の社員となった著名なKOLの女性に仲間になってもらい、次に彼女のKOL仲間に声をかけていきました。KOLにはKOL同士のネットワークがあって結びついているんです。そこに目をつけて、日本に住むほぼすべてのKOLと契約を結んだことで、「RED」の求める基準を達成することができました。
平野さんも町野さんも仲間を強調されましたが、僕も一人では大きなことは成し遂げられませんから、チームメンバーを大切にして、コラボすることで事業を広げています。それぞれがお互いに背中を預けられるような関係でのチームが理想的だと考えています。
「無知の勇気」で失敗を乗り越える
近藤:素晴らしい。今でこそ日本のトップクラスの大学生は卒業後スタートアップ起業家になることが主流になりましたが、当初はなかなか根付きませんでした。その一因に、日本には失敗を許容する文化がないことがあります。みなさんは失敗についてどう考えていますか?
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