直感型の天才が打算と地味な努力にこだわる訳 起業家4人が本音で語る「日本のサードドア」

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平野:恐怖心を感じたときは、自分の直感を大事にして、好奇心との比較をしているところもあります。恐怖心を感じるので現状のままで行くか、それとも好奇心のほうが強いので直感に従って進めるか、というふうに。それに、恐怖心って、危機感に変換もできるんです。

7年前、英語も話せないまま、知り合いもいないベトナムに一人で移住したのですが、それも直感でした。ベトナムにユーザーリサーチに行ったんですよ。で、到着した日に屋台でフォーを食べながら、「私、ベトナムに住みたい」と思いました。

直感を圧倒的な競争力に変換する

その時点ではまだ、私自身にも理解できない直感でした。でも調べてみると、ベトナムはプログラマーのレベルが高くて、層も厚い。やっぱりここで開発拠点を作ろう、と。

近藤裕文(こんどう ひろふみ)/サイバーエジェント・キャピタル(CAC)代表取締役。サイバーエージェント投資戦略本部長(藤田ファンド)。明治大学卒業。2001年国内系大手PR会社入社。コンサルティング業務を経験。2003年サイバーエージェントに入社、デジタルマーケティング業務に従事し、2006年博報堂とのJVの立ち上げなどを経験。 2013年サイバーエージェント・ベンチャーズ(現CAC)取締役に就任。2018年同社代表と藤田ファンド事業責任者に就任。現在8ヶ国10拠点にてインターネット関連事業への投資・サポートを実行(撮影:尾形文繁)

近藤:そして現在、ベトナムだけで160人ほどプログラマーを抱えていらっしゃるんですよね。

平野:はい。向こうで天才たちを見つけて、彼らにAIを学んでもらい、AIリサーチャーとして育成しています。当時は「日本人の怪しい姉ちゃんの会社」でしかなく、誰にも振り向いてもらえませんでしたから、現地の人材採用会社にお願いしたり、現地のカンファレンスに出たり、かれらが集まるコワーキングスペースを自分でつくったりして交流の機会を作って、来てもらったんです。

その陰では、リンクトインやフェイスブックを使って、目ぼしい人を探し、1000人ぐらいに直接メッセージを送るということもやりました。AIリサーチャーは日本全国でも400人ほどしかいないのですが、うちは現在100人抱えています。

ベトナムで新しいサービスをつくっていく。その階段を上るような過程もまさにサードドアでした。

近藤:ベトナムに移住したいという直感を、圧倒的な競争力に変換されたわけですね。

町野:ただ、そのような直感も実はどこかに裏付けがあって、生まれるものではないかと思うんですよ。なにかきっかけがあって勘が働いたのではないでしょうか。

僕は、メディアも家具も、業界の一番弱い人たちの声にヒントを得たことで直感が働き、事業を立ち上げました。やはり、小さな地道な積み重ねこそがサードドアを開けていくのだろうと感じています。

(後編へつづく)

泉美 木蘭 作家・ライター

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いずみ もくれん / Mokuren Izumi

1977年三重県生まれ。24歳でイベント企画会社を起業し、即刻倒産。借金返済のために働く日々をつづったWebサイトが話題を呼び、作家デビュー。以降、週刊誌やWeb媒体等で執筆。TOKYO MX「モーニングクロス」「激論!サンデーCROSS」などテレビ番組でレギュラーコメンテーターとして出演。著書に『オンナ部』(バジリコ)、『エム女の手帖』(幻冬舎)、『会社ごっこ』(太田出版)等。趣味は合気道とラテンDJ。

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