タダ働きが露見した「自販機品切れ闘争」の真実 有給を取得できず、日常的なパワハラ行為も
結局、順法闘争とストライキの結果、事業外みなし労働時間制の廃止、過去の未払い賃金の支払い、休憩取得、有給休暇の取得、支店の労働者の増員が決まった。現在では職場の労働状況はある程度改善し、以前のような長時間労働や不払い残業は減少しているという。
今日のブラック企業では、この労働市場を通じた「労働力」を枯渇させる戦略がより効果をもたらす。ブラック企業では、長時間労働やパワハラで労働者を使い潰すまで働かせて利益を上げ、彼らが辞めると代わりの労働者を大量に採用する、というサイクルが常態化している。ということは、採用に歯止めをかけられると、たちどころに業務が立ち行かなくなってしまうことになる。このため、ブラック企業と闘うには、労働組合を通じたハローワークによる採用規制が極めて大きな効果をもつのである。
SNSによる宣伝活動で世論を味方につける
同時に、SNSによる宣伝効果も労働市場に大きな影響を及ぼす。「ブラック企業だ」ということが問題となれば、途端に求人が難しくなるからだ。SNSによる宣伝活動は、世論を味方につけると同時に、ストライキの労働市場への影響力を拡張するための手段でもあるわけだ。
最近の人手不足は少子化だけで引きおこされているわけではない。ブラック企業が多くを占める劣悪なサービス業では、そもそもずっと前から「人手不足」が続いている。
過酷な労働で次々とうつ病になったり嫌気がさしたりして人が辞めていくからだ。そのような過酷な労働環境では、ストライキやこれにともなう求人停止、そしてSNSの発信は十分に威力を発揮するのである。つまり、今日は、ストライキが効果を発揮しやすい時代になっているといえる。
以上のように、ジャパンビバレッジの労働者たちのストライキ闘争から、労働者たちがもつ「労働力」という交渉資源の意識的な活用が、いかに効果的なものか、その「原理」の実践を鮮やかに見て取ることができるだろう。このストライキの原理は長い歴史を経て、今日の日本においても生き続けているのである。
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