「ちはやふる」のモデルになった人たちの"現在"

「畳の上の格闘技」競技かるたの"醍醐味"

「ちはやふる小倉山杯」第1回にはかるた界のトップ選手 8名が集結した(撮影:ちはやふる基金)

――楠木さんが思い出に残っている試合はありますか?

楠木:小学6年生のときに、福岡県の門司で行われた女流選手権(当時は持ち回りで各地域開催)が今でも思い出に残っています。そこで初めて、憧れだった渡辺令恵さんと試合をしたんですよ。渡辺さんは当時、現役の永世クイーン。負けて元々の試合だからと、とにかく懸命に札を取っていたら、いつの間にか勝っていました。試合の終盤、何故か「たきのおとは〜」を取るのが2人とも遅くて、そこをギリギリ拾えたことが勝機をたぐり寄せたのだと思います。

末次:その時は、お2人とも抜けていたということですか?

楠木:2人とも他の札に集中していて、その札だけおろそかになっていたんです。1枚1枚の札を大切にしなければいけないという教訓にもなりましたし、あの経験があったからこそ、渡辺さんを目標にクイーンになることを強く意識し始めました。

――楠木さんは、『ちはやふる』で主人公のライバルである若宮詩暢のモデルになっているとのことですが、楠木さんの強さは末次さんの目にどう映っていますか?

末次:格別な強さを持っていると思っていますし、楠木さんが対戦している動画を見るたびに絶望するんですよね。こんなに強いクイーンを詩暢ちゃんでどう描いたらいいのかわからなくて。途中で詩暢ちゃんが負ける展開を考えていたんですが、楠木さんのあまりに強い防衛戦をみて、「詩暢ちゃんは負けないわ」と展開を変えてしまったこともあります。

松川:楠木さんのかるたは、究極のかるたですよね。対戦したらきっと、僕は楠木さんのかるたに惚れたと思いますよ。

楠木:会長に惚れて欲しかったですね(笑)。でも多分、私はすべてが普通なんだと思います。私は大きな会に所属していなかったので、競技かるたのルールを本当に少しずつ習っていました。駆け引きで相手に勝つ方法も知らなかったので、ただ淡々と読まれた札を取ってきたんです。だからこそ、逆に異端だったのかもしれません。

10年無敗のクイーンが抱えるプレッシャー

――楠木さんは、史上最年少の15歳でクイーンになったんですよね。

楠木:はい。当時は中学校3年生がクイーンに挑戦するということで、数々のメディアに取り上げてもらいました。当時はちょうど反抗期で、私はあのクイーン戦で負けたら、かるたを辞める予定だったんですよ。実は前日のインタビューでも、「この試合で負けたら悔いを残す事なく、私のかるた人生は終わります」と答えているんです。

末次:勝ちたい気持ちはあったんですか?

楠木:性格上、「負け」という言葉は嫌いなんですけど、基本的には「勝つか負けるかは神のみぞ知る」と思っているんですよ。天智天皇の祀られている近江神宮で名人・クイーン戦が行われているのも、そういった意味があるんではないでしょうか。だから、勝ったときも気がつけば拍手の中に自分がいるという感じでしたね。

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