新型コロナウイルスの感染拡大が、マレーシアを直撃している。「マレーシア、コロナで事実上『国境封鎖』の衝撃」(2020年3月18日配信)で報じたように、今のマレーシアは、アジア初の「事実上の国境封鎖」に加え、学校や企業、商店などもすべて閉鎖される活動制限令が出され、原則として外出禁止となっている。
これまであまり目立つことのなかったマレーシアで、爆発的に感染者数が増え始めたのは、つい先週のことである。3月15日に190人の感染者が確認され、以降は連日100人以上の感染者数を更新し続け、昨日(23日)は1日の感染者数として最高の212人を記録、合計で1518人に上っている。
日本の感染者数を一気に追い抜き、東南アジアでも最多になってしまった形だが、注視すべきはその感染者数の実に62%が、たった1つのモスクで開かれたイスラム教の大規模礼拝を感染源としていることだ。
前記事でも触れた、イスラム教団体「ジャマアト・タブリーグ」が開催したクアラルンプール近郊で1万6000人が参加したとされる大規模な礼拝が集団クラスター(集団感染)となり、爆発的な感染者数の増加の大きな要因になっているのである。
4日間におよぶ集会では、大きなテントで皆が寝泊まりし、食事などを同じ皿などでシェアすることもあったという。モスク内も肩を寄せ合う距離で握手なども頻繁に交わされていたといい、「密閉」した空間で、大勢の人たちが「密集」し、「密接」にかかわりあっていた状況であったことは容易に想像がつく。
日本の専門家会議が警鐘を鳴らした環境と同じ
日本で3月19日に新型コロナウイルス感染症対策専門会議が改めて警鐘を鳴らしていた「最も感染拡大のリスクを高める環境」(①換気の悪い密閉空間、②人が密集している、③近距離での会話や発声が行われる、という3つの条件が同時に重なった場)そのものだ。
日本では感染者数が比較的抑制されていることから花見や大型イベントなどが一部で行われ始めているが、モスクの集団礼拝のように感染リスクを高める環境をつくってしまうと感染者数が一気に爆発することを考えれば、引き続きの警戒が必要と言えるだろう。
筆者がSNSを通じて、この集会に参加していたクアラルンプール近郊に住むイスラム教徒の男性にコンタクトを取ったところ、男性自身は検査の結果陰性だったものの、共に行動していた友人2人が陽性。現在2人は入院中であり、うち1人の男性の妻も陽性が確認されるなど、深刻な状況だという。
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