コロナビール「実売値」に見えた風評被害のウソ 日本では販売落ち込む今の時期にむしろ好調

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(1) 名称ではなく単に中国が及ぼす業界全体への影響

巷間に流布する記事では、「名前のとばっちりでコロナビールが影響」とされているが、単にそれは名前の問題ではなく、世界的な自粛モードによる飲食店全体での影響ではないか。とくに中国は、中間層の所得上昇によりビールがぶ飲み国民になったが、彼らの消費意欲が低減したことによる影響だ。つまり、コロナビールだけではなく、名前のバイアスをなくすならば、ビール業界全体の不調と考えればおかしくはない。

(2)無意識的認知

それに対して、私が引用したPOSデータは日本のものだし、比較的に新型コロナウイルスを抑え込んでいる日本では、スーパーマーケットでの需要は劇的な落ち込みを示さないのも理解できる。だから、ビール全体の売上点数も昨年比で、さほど変化していない(むしろ外食分を取り込んで微増さえしている)。

さらに私が仮説として取り上げたいのは無意識的認知だ。Corona Beerと、coronavirusではだいぶ違うが、日本語では、「コロナ」「コロナ」と連呼されている。新型コロナウイルスがメディアだけではなく、人々の会話の中でも支配的になっている現在、この「コロナ」「コロナ」の連呼が無意識に刷り込まれ、スーパーマーケット等で買い物をする際に影響を及ぼしたのではないか、という点だ。

ファンが買い支えている可能性も

私の個人経験で恐縮だが、実際に、私はアルコール消毒でコロナを除菌する“願掛け”を兼ねて、先月にコロナビールを購入した。繰り返すと、単なる“願掛け”でしかない。ただ、それでも私のような人たちが数パーセントいるだけで売上点数は変わるだろう。

(3)ファンの存在

また、逆にコロナつながりで、縁起でもない、と理解する人たちもいるだろう。まさに、アメリカのPR会社が2月に「コロナビールを今は飲まないと答えた人が38%にのぼる」としたのも、名前の類似に、なんらかの心理的な影響を受けた可能性が高い。

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だからこそ、同商品(コロナビール)のファンたちは、いまこそ応援、買い支えるべきだと購買に走った可能性がある。消費者ができることは、購買によって1つの意見を表明することだから、日頃のコロナビールへの感謝を兼ねてスーパーマーケットで積極選択したとするものだ。とくにアメリカで逆風が吹いていたから、それを受けて行動したファンたちもいたはずだ。

私は実は(3)の可能性が高いと予想するのだが、どうだろうか。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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