「テセウスの船」子役の怪演に人々が熱中する訳 大人顔負けの子どもがテレビドラマを光らせる

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ちなみに、検察庁のサイトによると、少年犯罪はこのように定義されている。

“少年とは,20歳に満たない者を意味し,家庭裁判所の審判に付される非行のある少年は,(1)犯罪少年(14歳以上で罪を犯した少年),(2)触法少年(14歳未満で(1)に該当する行為を行った少年-14歳未満の少年については刑事責任を問わない),(3)ぐ犯少年(保護者の正当な監督に服しない性癖があるなど,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがあると認められる少年)に区別されます。”

時代を映す鏡としてドラマでも時おり少年犯罪が描かれる。「テセウスの船」と同じ、TBSは1994年に「人間・失格 〜たとえば僕が死んだら」という中学校のいじめ問題を描いたドラマを制作している。KinKi Kidsの堂本剛と光一の共演作で、快活だったひとりの少年が自殺に追いまれたり、加害者と被害者がいつの間にか逆転したり、未成熟で不安定な少年たちの心に迫ったかなりヘヴィーな内容であった。

「QUIZ」神木隆之介の再来にも映る柴崎楓雅

同じくTBS制作で、2000年の「QUIZ」は、大人の身勝手さに傷ついた子供があの手この手を使って大人に復讐を行うという大人と子供の対立を描くのみならず、子供が大人を操る展開も攻めていた。そこで犯人を演じたのは神木隆之介(当時7歳!)。その天才性が光った。「テセウスの船」の柴崎楓雅は当時の神木隆之介の再来のようにも映る。

2009年には、漫画原作の「アイシテル〜海容〜」(日本テレビ)が話題となった。犯人探しのドラマではなく、7歳の少年殺人事件の犯人が11歳の我が息子あったことを知った母親が息子の心を追い、そして被害者家族とも触れ合っていく物語である。殺人を犯してしまった息子の押し隠された想いには言葉も出ない。

いずれにしても、少年犯罪のドラマは、大人になった我々が思いもかけなかった、もしくは忘れていた少年期の心をあぶり出し、凝り固まった常識的ものの見方を破壊する。それらはいたまし過ぎるし、少年犯罪ものはコンプライアンスもあるのかさほど多くはない。どちらかといえば、大人にひどい目に合わされた子供への救済を描くドラマのほうが少なくないと感じる。とりわけ昨今は、「義母と娘のブルース」のようなファミリーで見ることができる心あたたまるヒューマンなドラマが求められ、そのなかで「テセウスの船」が少年犯罪にチャレンジしたことは興味深い。

みきおの共犯者は誰なのか。いったいなぜ、どういう目的で……結末を楽しみに見たい。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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