犬猫売るほど飼育放棄が頭をよぎる店員の苦悩

命を商品として扱うことに耐えきれなくなる

――世間から批判されていると現場で感じたことはありますか。

それはもう、ひしひしと。毎日クレームの電話がかかってきていたので。

店舗に直接やってきて「生体販売はかわいそうです。やめてください」と言って怒鳴り込んてくる方もいました。

そうした意見や非難を受けて、「自分たちが不幸な犬猫を生み出す一因になっている」という事実が心に重くのしかかるようになりました。

僕は動物が好きでショップ店員になりましたが、働くモチベーションは「売り上げを伸ばすこと」でした。もちろん動物を大切に育てて欲しいという思いはありましたが、販売頭数を伸ばすことが楽しい、上司に評価してもらえるのが嬉しい、出世したい、表彰されたい……。そういう気持ちが強かった。

でも、売れば売るほど飼育放棄等の問題は増える。犬猫が好きで大切に思っているのに、結果として自分たちが不幸な犬猫を生み出してしまっている。

その葛藤を働いている間ずっと抱えていました。それで結局、命を商品という“モノ”として扱うことの重みに耐えられなくなって辞めてしまいました。

命を「モノ」として扱う重みに耐えきれず

――今のペットショップ業界について思うことはありますか。

ペットショップは世間的に良くないところだと思われていますよね。僕が働いていたときもそれは強く感じていたので、自分の職業を他人に言えないことがよくありました。

たとえば、プライベートで知り合った動物好きの人に「保護猫を飼ってるんですよ」と言われときに、「ペットショップが嫌いな人だったらどうしよう」と恐れて会話ができなくなってしまったり。

こんな状態ではペットショップで働きたいと思う人は増えません。業界全体で問題解決に取り組み、ネガティブなイメージを払拭しない限りは、業界の衰退は避けられないと思っています。

リディラバジャーナルでは、「犬猫の殺処分〜行き場を失う命〜」を全8回にわたって特集しています。殺処分される犬猫を生み出すペット産業や飼い主、そしてそれらの犬猫を過剰に抱え込む動物愛護センターや動物愛護団体。それぞれの課題の背景には何があるのか。ぜひ他の記事もご覧ください。
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