国に先駆ける地方自治体の「事業仕分け」、ムダ削減・役所の体質改善に実感も

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国に先駆ける地方自治体の「事業仕分け」、ムダ削減・役所の体質改善に実感も

11月16日から27日まで約2週間にわたり、国の事業仕分けが実施され、さまざまな議論が交わされた。だが、地方では、すでに一足早く事業仕分けを行い、そこでの評価を実際の施策に生かす自治体も出てきている。

事業仕分けを提唱しているシンクタンク「構想日本」によると、地方自治体の事業仕分けは、2002年2月の岐阜県を皮切りに、直近までに40以上の自治体で計50回以上実施されている。【下表】

現在、全国には1900余りの自治体があるので、事業仕分けを実施したのはまだほんの一握りにすぎないが、その輪は徐々に広がりつつあるようだ。

背景にあるのは、地方自治体がほぼ例外なく直面している厳しい財政状況にある。小泉政権時代の「三位一体改革」により、地方交付税が大きく削減されるなど、地方財政は大きな打撃を受けた。また、少子高齢化が進む中で社会保障等の負担が増加する一方、本州中部以外の地域の自治体では公共事業削減に伴う雇用の減少も深刻化している。こうした状況を打破するための手段として、事業仕分けが採用されるようになってきた。

「構想日本」の加藤秀樹代表は、以前から行政改革や地方分権の必要性が叫ばれているにもかかわらず、まったく進んでいかない現状を変えるために事業仕分けをスタートさせたと説明する。国の事業仕分けが大きく報道されていることもあり、「予算を削減するための手法」という見方が広まっているが、それはあくまでも1つの側面にすぎないという。

実際に事業仕分けを実施した自治体でも、「民間企業では1つの仕事のコストは年々下がっていくが、役所の仕事は年々コストが上がっていく。この仕組みを改める」(兵庫県加西市・中川暢三市長)というように、歳出削減への効果を狙う側面はある。

しかし、「業務の中身を徹底的に洗い出し、ブラックボックスをなくす」(浜松市・鈴木康友市長)、「職員のポテンシャルを上げる」(千葉県館山市・金丸謙一市長)、というように、情報公開と職員の意識改革を第一目標に掲げる自治体も多い。

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