橋下徹氏「交渉には合法的な脅しも必要だ」 相手と「敵対関係」にあるときの交渉術
一方、「合法的に脅す」という手法は、敵対的交渉のときに役に立つものだ。他方、協調的交渉のときに使うと、逆効果にしかならない。その点は気をつけなければならない。Win-Winを目指した協調的な交渉のときには、たとえ合法的なものであっても脅してはダメ。相手にいかに利益を渡すか、譲歩するかが決め手となる。
しかし、敵対的交渉の場合は、こちら側の力を見せつけて「相手を脅す」ことが必要になることがある。「脅す」といっても、あくまでも「合法的な」ものでなければならないことは当然である。
例えば、相手に対して「それならば、訴訟をします」と言うのは、合法的な脅しになる。僕ら弁護士が交渉を動かす際によく使う手だ。これももちろん限度を越えれば、恐喝罪になりかねないので注意が必要だ。
政治の世界での「合法的な脅し」とは
政治の世界では、「選挙において対立候補を立てますよ」というのも、合法的な脅しになる。拙著『交渉力 結果が変わる伝え方・考え方』で詳述しているが、僕は大阪都構想の住民投票実施の合意を取り付ける際に、公明党に対してこの「脅し」を使った。
当時大阪では維新の会の勢いがあったので、公明党が衆議院議員の議席を持つ関西6選挙区に維新の候補者が立候補するというのは、公明党にとっては脅威だった。公明党が住民投票の実施に同意してくれなかったので、僕と松井一郎氏(現・大阪市長。当時・大阪府知事)は「市長と知事を辞職し、さらに維新の若手エースも加えて立候補し、公明党の議員をすべて落としに行く」と宣言した。
選挙で対立候補を立てることは、合法的な脅しになる。この結果、公明党は住民投票の実施に同意してくれた。
相手と対決する「敵対的な交渉」の場合には、このように「力を見せつける、圧をかける」といった脅しを使うことも必要になる。僕が交渉の名手と目しているアメリカのトランプ大統領を例に出そう。彼がよくやるパターンは、最初に超強硬な球を投げるというものだ。かなり厳しい条件を突きつけて、その後、条件を引き下げる。それは脅しでもあり、「仮装の利益」を与えることにもなっている。
例えば、中国に対して関税を25%引き上げると言っておいて、引き上げ措置を見送ったりしている。関税の25%アップは中国の輸出に大打撃を与えることになり、脅しだ。
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