橋下徹氏「交渉には合法的な脅しも必要だ」 相手と「敵対関係」にあるときの交渉術

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そして引き上げの見送りや、アップ率を25%よりも低くすることは、アメリカ側に持ち出しはないけれども、中国にとっては利益に見える。トランプ大統領は、アメリカが中国に利益を与えたように見せかけて、中国から譲歩を引き出そうとしているのだ。

また、相手に「交渉を決裂させたら大変なことになる」と思わせることも必要だ。それには、圧をかけなければいけない。交渉当日に圧をかけようとしても、相手はあまり圧を感じてくれない。交渉の場で圧をかけるのではなく、交渉に臨む前の段階で圧をかけておいたほうが効果的だ。

トランプ大統領は、敵対的交渉のときには必ず事前にガンガンと圧をかける。「俺の言うことを聞かなかったら大変なことになるぞ」と。北朝鮮に対しては交渉前に、北朝鮮近海に米海軍空母を出して軍事力をちらつかせた。イランに対しては、核合意から離脱して制裁をちらつかせた。

同盟国との貿易交渉でも、「この交渉がうまくいかなければ関税を引き上げるぞ」「駐留米軍の駐留経費の追加負担を求めるぞ」と事前に圧をかける。

圧をかける手法の効力

ただし、相手がその圧に屈するかどうかは相手の力次第のところもある。日本を含む同盟国は最後のところではアメリカに頭が上がらないので、決裂を避けようと必死になる。しかし、中国やロシアは簡単には屈しない。北朝鮮やイランも、中国やロシアの力を借りながら対抗している。

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このように圧をかける手法は、力と力のぶつかり合いになるが、それでも相手も圧から解放されたい気持ちはあるはずで、膠着した事態から小さな譲歩の糸口を見いだすきっかけになる可能性がある。

僕が公明党と大阪都構想の住民投票の実施について交渉したときには、「決裂した場合には、公明党の国会議員を選挙で落としにいく」と公に何度も宣言しておいてから、交渉の場に臨んだ。

橋下はケンカばかりだと批判されたが、公明党との話し合いはそれまでの数年間、何百回とやってきた。それでも事態が動かないときには、法律の範囲内でできることは何でもやる覚悟が必要で、法律の範囲内でのケンカも辞さない迫力も必要になる。

橋下 徹 弁護士、政治評論家

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はしもととおる / Toru Hashimoto

1969年、東京都生まれ。弁護士、政治評論家。2008年から大阪府知事、11年から大阪市長を歴任し、大阪都構想住民投票の実施や、行政組織・財政改革などを行う。15年に大阪市長を任期満了で退任。現在、テレビ出演、講演、執筆活動を中心に多方面で活動。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。

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