コロナがアメリカ映画館に招く「最悪シナリオ」

「劇場で映画観る文化」は終わるかもしれない

ところが映画業界の商慣習が、この非常事態で、あっという間になし崩しになろうとしているのだ。

映画館で見たいと思っていた人もそうできない状況なのだから、作品をそのまま葬るよりは別の形で出し、少しでもコストを回収したいというスタジオ側の事情はわかる。コロナの収束のメドもまるで立たない今、保留になった映画がどんどんたまっていくのもまた困るだろう。外出を控えるように言われて自宅にこもっている観客にしても、家で新しい映画を見られるのは、うれしいに違いない。

劇場側が恐れる「コロナ収束後の新常識」

しかし、ほかのスタジオも追従して、これが「新常識」になってしまった場合、平穏な日常が戻ってきた後に、元どおりにするのは難しいかもしれない。

ストリーミングやケーブルテレビのオリジナルドラマが充実してきた近年、劇場主は人が映画館に足を運ばなくなることに強い懸念を持ち、いすなど内装にお金をかける、シアター内で食事やお酒を注文できるようにするなどして、人々を呼び込もうとしていた。

それが、不可抗力とはいえ、自分たちが何もできない状況にあるときに、新作映画は自宅で安く見られるものという、絶対に避けたかった新たな定義が作り上げられようとしているのである。

ただ、スタジオにしても、全部の作品をこの形で出そうと思っているわけではない。実際、ユニバーサルは、コロナパニックが出てすぐ、1番のお宝である『ワイルド・スピード』最新作『F9』を、1年も先に延期している。世界興収10億ドルも可能な大作は、それができるよう、理想的な時期に全世界のビッグスクリーンでほぼ同時にかける以外ないのだ。

すでに製作が完了した大作映画は、これからもきちんと劇場でかかるだろう。しかし、劇場はそういう映画だけではやっていけない。最も高い興収を上げられるのは、老若男女、誰にとっても見たい作品がそろっているときなのである。面白そうな映画がいくつもあってこそ、シネコンにその1つを見にきた客が「来週末はあっちを見に行こうか」と思う。それが安定したビジネスにつながる。

さらに、それらの大作ですら近々、品不足になる恐れがあるのだ。コロナショックを受けて、『ファンタスティック・ビースト』『ジュラシック・ワールド』『バットマン』『マトリックス』『アバター』などの最新作が、立て続けに撮影を一時中止しているのである。さんざん準備に時間がかかった揚げ句、この夏ようやく撮影開始になると見られていた『インディ・ジョーンズ』も、この状況ではまたもや延期になるだろう。

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