借金の取り立てから逃れるために生活保護を利用する――。はたしてこんな方法はアリなのか。知り合いのケースワーカーに聞いてみたところ、実はありうる話だという。
最低限度の生活を維持するという制度の趣旨から、保護費から借金を返済することはできない。逆もしかり。保護費と知りながら、借金を取り立てることもまたできないのだ。
このケースワーカーによると、弁護士が依頼人を悪質な取り立てから守るために、自己破産までの間、あえて働かずに生活保護を利用するようアドバイスすることはあるという。セーフティーネットとしての生活保護制度には不十分な面もあるが、いったん利用できれば、それなり手厚く守られるということなのだろう。
「俳優として成功できると思いますか?」
ヒロアキさんとは、夕方の早い時間に都内のファミリーレストランで落ち合った。私は、ヒロアキさんから体質的に合わない理容師を続けた理由や、独立を急いだ理由を聞いても、どこか釈然とできずにいた。
「母に認められたいから」という言葉にすべてを集約してわかったような気になっていいのだろうか、という迷いがあった。取材は長引き、気がつけば終電の時間が迫っていた。さすがに潮時だろう。
ノートを閉じかけたとき、ヒロアキさんが切羽詰まった様子でこう尋ねてきた。「俳優として、私は成功できると思いますか?」。
難問である。少なくとも「母から認められたい」と思っているうちは、難しいだろう。当然ながら、親は意図的に子どもから自己肯定感を奪うわけではない。
「愛の反対は憎しみではなく無関心」という言葉があるけれど、愛憎半ばしているうちは親の呪縛からは逃れられない。それこそ親の死に目に会えなくても「それが何か?」と言える境地に一度は至らなければ、いったん歪んでしまった絆から自由になることはできないと、私は思う。
迷った末に、私はただこう答えた。「成功してほしいと思っています」。
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