ノーベル賞受賞者が「笑い」を取りに行くワケ 山中教授「知られざるもうひとつの才能」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ある日突然、多くの実験用マウスがメスになっていると研究助手から告げられる。研究所が飼育していたマウスにメスはいないはずだ。

このミステリアスな性転換は、性転換ではなくて研究の結果、つまりは予想外の研究結果で、そして今回のノーベル賞につながる研究へと導くものだったのだ。この後の展開も少し引用する。

So I further looked into what was going on. And I found this totally unexpected result.  It was not babies.  It was this huge liver cancers.

(和訳)
そこで何が起こっているのか、さらに見てみました。すると、まったく予想外の結果が出たのです。それは赤ちゃんではありませんでした。巨大な肝臓がんだったのです。

研究者たちが柔軟な頭の持ち主でなかったら、単なる実験の失敗として片付けられてしまっていたかもしれないことであった。

山中教授のスピーチが世界に与えたインパクト

ノーベル賞の世界にはかつて日本人は受賞の対象にはならないといった固定観念があり、日本人最初の受賞者が出るまでに50年の歳月が必要だった。

『英語で聴く 世界を変えた感動の名スピーチ』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

また物理学賞を受賞した湯川秀樹を例外として、日本人に与える賞は人文科学や文学・芸術の分野が意識され、欧米の学者・研究者と肩を並べる人材が選考の対象になるまでには、さらに時間がかかった。

20世紀後半の日本の科学技術の進歩やその背景になった自然科学の分野での研究者の輩出は、こうしたかつての固定観念を打ち破った。

高邁な思想や哲学、難解な学問的理論を披瀝するノーベル各賞の受賞者が多い中で、山中教授のスピーチは内容、用語の選択、表現、ウイットなどさまざまな面で特段に魅力的な完成されたスピーチになっている。

聴いているだけで幹細胞研究の世界に引き込まれていくだろう。

平野 次郎 元NHKキャスター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひらの じろう / Jiro Hirano

1940年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、コーネル大学政治学部大学院に留学。専門は国際関係論・国際文化交流論。NHKに入局、キャスターとして活躍し、ヨーロッパ総局長、解説委員などを務める。元学習院女子大学特別専任教授。著書に『英語ものがたり』(中経出版)、『英語世界の漫歩計』(日本放送出版協会)、『アメリカ合衆国大統領と戦争』(青春出版社)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事