放送主体のフジHDは、アベノミクスの好影響は限定的
次に、フジHDの平成26年3月期 第3四半期決算(2013年4~12月)を見ていきます。ちなみに、産業経済新聞社(産経新聞)はフジHDの関連会社となりますので、産経新聞の業績はこの連結決算には営業外収益の一部に影響を及ぼす以外は、含まれません。
では、収益性を調べてみましょう。損益計算書(7ページ)を見ますと、売上高は前年同期の4706億円から今期は4691億円まで微減しています。さらに売上原価が微増し、売上総利益は5.1%減となりました。販管費はほぼ横ばいとなり、営業利益は310億円から241億円まで22.1%減少しています。
私は、これは意外な結果だと感じました。冒頭でも説明しましたが、2013年度は、好景気の影響からマスコミ業界は絶好調だろうと予想していたからです。
もう少し詳しく見てみましょう。セグメント情報(同2ページ)から事業別の業績を調べますと、営業増益になっているのは「広告事業」と「都市開発事業」だけです。確かに、広告事業は前年同期と比べて395.4%と大幅増となっていますが、全体の営業利益241億円のうち3億円しかありませんから、規模としては非常に小さいのです。
フジHDの収益構造は、売上高の50%以上、営業利益の70%以上が放送事業によるものです。この放送事業も、コマーシャル放送時間枠を販売することで得られる広告収入で構成されているのですが、近年、続く視聴率の低下や、前期の2012年にロンドン五輪の放送という“特需”の反動によって、今期は売上高と営業利益ともに前期より落ち込みました。
視聴率はコマーシャル時間枠の販売価格を決める大きな判断材料にもなりますから、視聴率の低下はテレビ業界にとって深刻な問題です。以上のことが重なって、全体の営業利益も減少したというわけです。
このように、好景気であっても減収減益となったフジHDですが、貸借対照表(5~6ページ)から自己資本比率を計算しますと、58.8%という数字になります。これは非常に高い水準ですので、安全性についてはまったく問題がないと言えます。
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