それで真っ先に相談に行ったのが、この物語の筆者である、私である。ある日、後輩である田中健二朗(=DeNA)から突然電話があった。
「後輩(水野)が今年で引退するんですけど、相談に乗ってやってくれませんか? すごくいいヤツなんです」
私ごとになるが、私は2012年にベイスターズをクビになった、いわば先輩である。翌2013年からエンジニア、アナリスト、ライター、イベント企画などさまざまな仕事に取り組み、2016年に起業。コンサルタントとしてあらゆる企業をサポートしつつ、こうして執筆活動も続けている。
そんな私のアドバイスだけでは偏りが出るため、一般企業で活躍している元野球選手も連れて行こうと、同級生の松下一郎にも声をかけた。松下は、2013年にベイスターズをクビになり、球団職員を経て、現在は世界で従業員数3万6000人を超える、セールスフォースドットコムで大活躍している(ちなみに、大活躍は私の解釈だが、同社に勤める誰に聞いても、「松下くんはすばらしい!」と返ってくる)。
心を動かしたもの
「起業したり、大手企業でも大活躍している先輩を見て、純粋にカッコよく見えました。そこで、球団にものすごくケアしていただいてありがたい思いもありましたが、僕も社会に出ようと決心しました」
とはいえ、何をやればいいかはわからなかった。しかし、わかっていることが1つだけあった。それは、”人のためになる事”をやる。そう考えている中で、2年前の北海道で起きた大地震を思い出す。
「2年前の大地震で、地元北海道の野球チームのグラウンドが使えなくなりました。2019年になっても、まだ使えていない状況の中、クラウドファンディングでお金を集める事でグラウンドを修復できたんです。誰かのためになるって、すばらしい事だと思うし、クラウドファンディングの可能性をものすごく感じました」
ここから、とにかく人と会う事に精力を注いだ。多くの人と会い、知見を広めていくと同時に、プロ野球選手会事務局が2019年から初めて開催した、戦力外通告を受けなおかつトライアウトを受けない人に向けたセミナーを受講した。
「ここで、奥村武博さんと出会いました。奥村さんは、元野球選手で現在は会計士。起業に関しての相談には持ってこいの人でした」
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