30年ぶり暴落に映る「コロナ恐慌」最悪シナリオ 世界のリーダーが協調して対応する必要がある

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サーキットブレーカーは「S&P500」や「ダウ工業株30種平均」といった代表的な株価指数の下落幅が7%を超えると、市場の取引が15分間停止され、さらに13%の下落で15分、20%まで行くとその日の取引は中止になる。アメリカの株式市場の長い歴史の中で、サーキットブレーカーが作動したのは1997年のアジア通貨危機以来のこと。しかしながら、今年3月の第2週は2回も作動してしまった。

アメリカに対してはコロナウイルス感染拡大への対応が十分ではないという指摘がある。日本時間の3月12日(現地時間11日)に行われていた「なでしこジャパン」とアメリカの女子サッカーの試合でも、観客席はほとんど満員に近い状態で入っていたし、欧州からの入国規制は実施したものの国内のイベントなどに制限はない。

医療システム弱く格差拡大や大統領選も懸念

もともとアメリカには、感染爆発を心配するいくつかの要因がそろっている。1つは皆保険制度がないために、一般市民の医療システムがほとんど機能していない点だ。アメリカの診療費の高さは有名で、毎月2万円ずつ保険料を支払っていても、風邪で診察を受けただけで5000円程度の治療費がかかると言われている。一般市民が気軽に医療を受けられる仕組みになっていない。 

2つ目の懸念は、ホームレスが多いことだ。健康保険にも入っていないホームレスがバタバタと倒れて、新型コロナウイルスの感染がわかる事態になりかねない。格差社会は、こうしたパンデミックに弱い。

そして最後の懸念が、大統領選挙の最中であるということ。すでに候補者が決まっているに近い共和党大会でさえ、トランプ大統領が赴いて数多くの観衆の前で演説をする。それがアメリカのスタイルであり、クラスター(集団感染)の大きな懸念となっている。

例えば、航空会社大手のボーイングは、138億ドル(約1兆4300億円)の融資枠を3月13日にも使い切る計画だ、とブルームバーグが報道している(2020年3月12日配信記事)。新型コロナ感染拡大の対策として、手元資金を増やす狙いとみられる。ボーイングのような大手企業でさえも、金融機関からの融資が細るのを警戒して、経済全体の資金供給量が減少する信用収縮に備えようとしているわけだ。

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