こうしたケースを見てもわかるように、今回の新型コロナウイルスによる感染拡大が経済に大きな影響を与えるのは、その先行きが見えないからだ。感染症の専門家たちの見解を総合すると、パンデミックが収まる時期というのは、究極の場合、次の2つしかないようだ。
どちらにしても時間がかかるはずで、残念ながらそう簡単に事態が収束する可能性はほとんどないと言っていい。問題は、どの程度感染拡大の規模を縮小することができるかにある。世界では日本のようにいち早く一斉休校やイベント自粛に着手する方法を選んだ国と、イタリアや韓国のようにPCR検査の数を増やして感染爆発の実態がわかってから、学校や店舗、道路などの閉鎖措置をとる方法に分かれている。
日本の方法は、ひょっとしたら急速な感染拡大をある程度抑制させられるかもしれない。しかし、その副作用として企業活動を停止させる時間が長くなってしまうというのが欠点だ。PCR検査の体制を整えていないために、いつまでたってもだらだらと感染者が出てきてしまうような状況に陥る可能性もある。
長期にわたる企業活動の停止は、実は大きな犠牲を強いる可能性がある。その代償は、リーマンショックや東日本大震災を大きく上回る規模になるかもしれない。このままいけば、今年4~5月あたりには資金繰りに窮した中小企業や大手企業の一部で経営破綻する企業が出てくる可能性がある。もともとマイナス金利で疲弊していた金融機関が破綻するシナリオすらありうる。
株価崩壊の次は金融システムの崩壊?
ちなみに、今回のパンデミックの及ぼす世界経済への影響は、「ブラックスワン(想定しない危機)」というよりも、「灰色のサイ(発生する確率が高いものの見逃してしまう危機)」と言ったほうが正しいかもしれない。新型コロナウイルス自体は事前に誰も予想できなかったリスクだが、以前から感染症が世界に広がるパンデミックが起きた際、経済に与える悪影響は想定されていた。
現在の先進国のリーダーたちが、そこに対して有効な予防策を打ってこなかったことが露見した。そういう意味では、気候変動のリスクと似ている。
リーマンショックが起きた2008年9月以降の状況を振り返ると、アメリカの2008年10~12月の実質GDP(国内総生産)は前期比マイナス3.3%に落ち込んでいる。当時はつるべ落としと言われたが、おそらくこれと比べても大差がない程度の大きなマイナスが予想される。
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