多額の賠償を請求する名誉毀損訴訟、批判を封殺する訴訟を抑止する法整備が必要

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ところが、最近頻発する報道機関やジャーナリストを相手取った損害賠償請求訴訟では、数千万~数億円の請求がたびたびなされるようになってきている。

もう一つの特徴は、記事を掲載した報道機関だけでなく、執筆者などの個人をも同時に訴えるケースが増えていることである。

おびえさせて批判を抑える

一般に訴える側の企業に比べて、訴えられる側の報道機関やフリーライターなどの個人は、経済的な力が著しく劣る場合が多い。また、損害賠償請求訴訟の被告になると、敗訴しなくても弁護士の選任等の訴訟準備で費用がかかるほか、裁判所側からの呼び出しや弁護士との打ち合わせなどに膨大な時間を費やさざるをえなくなる。これは、特に個人にとっては極めて負担が大きい。

つまり、訴訟を起こすこと自体が批判的な記事を報道することに対する一種の恫喝として作用することになる。しかもこの恫喝は、実際に訴えられた報道機関や執筆者だけに対して有効なのではない。すべての報道関係者をおびえさせ、批判的な記事の掲載を抑止させる効果がある。

この記事の冒頭、「提訴すること自体の効果を狙っていると思われる訴訟」と書いたのはそういう意味である(ただし、この記事で例に挙げた訴訟の原告に恫喝の意図があったかは不明)。

こうした訴訟を最近では、SLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)と呼ぶようになった(以下「スラップ」)。これは、訴訟先進国の米国で多発したため、大きな社会問題になった。なぜなら、スラップ訴訟は、報道機関を萎縮させることによって自由な言論を封殺し、その結果として公共の福祉を大きく損なうからである。

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