多額の賠償を請求する名誉毀損訴訟、批判を封殺する訴訟を抑止する法整備が必要

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賠償請求額は10億円

また、次のような訴訟もあった。

『週刊東洋経済』が03年2月8日号に掲載した特集「異形の帝国 クリスタルの実像」と同年6月14日号に掲載した特集「異形の帝国 クリスタル続報 社員を捨てるリストラ日本の闇」に対して、書かれたクリスタル(現ラディアホールディングス・プレミア)が発行元の東洋経済新報社を相手取って03年に東京地裁に起こした裁判。

この訴訟で、原告は被告の東洋経済新報社に謝罪文掲載および、約10億円の損害賠償を求めた(結局、07年2月2日、東京高裁でのクリスタルによる全面的な訴訟取り下げによって終結)。

さらに、クリスタルは、同社を批判する記事を掲載した『週刊ダイヤモンド』の発行元のダイヤモンド社に1億1000万円、『週刊エコノミスト』の発行元の毎日新聞社に5億円、『日刊ゲンダイ』の発行元の日刊現代社に5億1000万円の損害賠償請求を起こしている。

ほかにも、こうした報道の筆者や発行元を相手取った訴訟としては、読売新聞社が“押し紙”(発行部数を水増しするために、販売店に押しつける実際の購読契約数を超える部数)問題を追及する記事を書いた、フリージャーナリストと出版元の新潮社を相手取って起こした訴訟(損害賠償請求額は5500万円)などが知られている。

これらの訴訟を見て気がつくことは、いずれも損害賠償の請求額が異様に大きいことである。

民事裁判では、訴えを起こすときに請求額に応じた印紙代がかかり、敗訴すればその費用は原告負担になるため、賠償請求金額はおのずから相応の額に落ち着く場合が多い。

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