「人はお金で動く」と信じる人の決定的な誤解

行動経済学の世界的権威が説く「幸せな報酬」

富永朋信氏(左)がダン・アリエリー氏に聞いた(撮影:アンドリュー・ミラー)
消費から夫婦関係、子育て、従業員のモチベーションまで、「幸せ」に関する8つの質問に対し、世界的ベストセラー『予想どおりに不合理』でおなじみ、行動経済学の権威であるダン・アリエリー氏が富永朋信氏の疑問に答えた新著『「幸せ」をつかむ戦略』
その中でアリエリー氏が語った、人間のモチベーションを上げるための「幸せな報酬」とは?(聞き手はPreferred Networks執行役員・CMOの富永朋信氏。本稿は新著の一部を再編集しました)

「お金による報酬」には限界がある

ダン・アリエリー(以下、ダン):半導体メーカーのインテルで、ある実験を行いました。この工場では、従業員が4日働き、4日休んでいます。仕事の日は勤務時間がとても長く、1日12時間働きます。インテルの人事部の人たちは、こう考えました。

「4日休んだ後に仕事に戻ったら、うれしいわけがない。おそらくまだ休み気分を引きずっているから、その日には目標を与えよう。例えば半導体を1300個作る。そして目標を達成できたらボーナスを30ドル与えよう」と。2日目は目標もボーナスもなし、3日目も目標もボーナスもなし、4日目も何もなし。それから、また4日休んだら、仕事に戻った初日に目標とボーナスがある、という仕組みです。

この話を聞いたとき、なかなか面白いと思いました。ボーナスがある日とない日があるからです。人はボーナスをもらえないとき、ボーナスの余韻があるから、グッドウィル(善意。クビにならないためにやる最低限の仕事と、仕事に心から燃えていたらできる最大限のギャップ)がどうなるのかが、非常に興味深い点でした。 

そこでインテルに行き、何もないコントロール(対照)条件と現金、ピザチケット、上司からの褒め言葉というさまざまな条件で実験しました。初日の結果はゼロだったのがコントロール条件だけで、残り3つの条件はすべて成果が上がりました。現金は約5%よくなり、ピザと褒め言葉は約7%よくなりました。しかし、興味深いのはその翌日の結果。現金をもらったグループは、2日目になると生産性が一気に低下していたのです。

この実験から学べる大事なポイントは、お金でできることと、モチベーションが働く仕組みの間には大きなギャップがあるということ。本当のコミットメントや愛情は、特定の言葉やお金で人に報酬を払うだけで得られるものとは大きく異なるんです。

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