「AI運行バス」は社会の隙間を埋められるのか

横須賀の実証実験で乗ってわかった利便性

AI運行バスとはいえ、待っていた車両は大きなミニバンといったふう。クルマをのぞき込むと、すでに先客として白髪の老夫婦が1番前の列の席に座っていた。運転手に予約番号を告げて、奥の席に乗り込む。われわれ2人を乗せると、バスはすぐに発車した。

AI運行バスとして使われる車両。バスというよりも大型のミニバンといったもの。京急グループのタクシー会社の運転手がハンドルを握る(筆者撮影)

座席の前にタブレットが設置されており、そこに目的地が表示されている。先客である老夫婦の目的地である自治会館に先に立ち寄り、その後にわれわれの目的地に向かうようだ。ドライバーの前にあるモニターにも目的地が表示されているが、カーナビのようにルートの指示はなかった。

「AI運行バスでは、ルートは引きません。ドライバーが嫌がるんですね。ですから、次にどこへ行くのかだけを指示します」と槇島氏。

運転手は、もともと二種免許を持つタクシードライバーだ。確かにガチガチに決められたルートを走るよりも、渋滞状況などを見ながら、フレキシブルに走るほうが性に合うのだろう。もちろん、ルートを定めることは可能だ。しかし、これまでの経験からルートを決めないほうがいいとの結論に達したという。

バス路線のない地区と駅や町の中心を結ぶ

4人の乗客を乗せたAI運行バスは、最初のうちは路線バスも通る大きな道を進んだが、途中から住宅街の奥へと分け入った。

横須賀市の実証実験では、路線バスのない丘の上のエリアと、駅や市の中心地などに35の停留スポットを設定した(筆者撮影)

今回の実証実験は、丘の上の地区を多く含むこともあり、AI運行バスは駅からどんどんと丘を上っていく。今回、乗降場所として定められた35カ所の多くは、バス路線のないエリアの逸見地区である。

つまり、バス路線のない丘の上の逸見地区と、海岸線近くにある駅(京急逸見駅、JR横須賀駅)、そして横須賀中心部にある市役所や病院を結ぶことが、今回の実証実験の狙いであったのだ。

駅から5分ほど走って、AI運行バスは最初の目的地となる自治会館に到着。停まったのは大通りではなく、住宅街の中の細い道だった。バス停のような目印はなにもない。

2人の老夫婦を降ろしたAI運行バスは、すぐに出発。住宅街を抜けて、丘の上にあるスーパー「京急ファーブ湘南池上店」に向かう。そこがわれわれの目的地であった。

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