「AI運行バス」は社会の隙間を埋められるのか 横須賀の実証実験で乗ってわかった利便性
丘の上にあるスーパーの駐車場の一角には、AI運行バス用の乗降場所が確保されていた。そこでわれわれは料金(1人300円)を支払って降りる。
実は、わざわざスーパーにAI運行バスで向かったのは理由があった。それが今回の横須賀の実証実験の特徴でもあるのだ。それが地域サービスとの連携だ。
横須賀における実証実験のテーマは、「地域施設+新たなモビリティ+ICT技術の連携による、健康生活を創生する持続可能なスマートなまちづくり」だ。ポイントとなるのは「健康」と「持続可能=地域経済の活性化」。これをAI運行バスによって実現しようというのだ。
訪問割合が2.7倍に増えた実例も
具体的には、病院や商業施設と連携するサービスを用意している。病院であれば、利用者に通院前日のリマインド通知を行い、同時にAI運行バスの予約も行えるように。また、管理栄養士監修の健康レシピを提案するアプリ「FitFood」と連携させて、健康レシピに必要な食材をスーパーなどに買いに行く手助けもできるようになっている。
さらには、単純にAI運行バス利用者に商業施設のクーポンを用意して、アプリで宣伝広告も行えるシステムになっているのだ。ちなみに、AI運行バスの導入が、地元商業施設の経済活動のサポートになった実例もあるという。
例えば、九州大学での実証実験では、AI運行バスを導入したことで、学内の店舗の来店者が1.4倍、売り上げも1.7倍に増えたという。会津若松市では、普段は訪問しないマイナーな観光スポットへの訪問割合が、2.7倍に増えた。
AI運行バスがあることで、住民がより気軽に移動できるようになり、その結果として地域の経済活動が活発になるわけだ。
また、地元の経済が活発になってAI運行バスの利用が増えれば、運賃収入により運用コストをカバーするのも楽になる。AI運行バスの利用と地域経済の活性化が、うまくかみ合えば、相乗効果を発揮する可能性もあるのだ。
ただし、「われわれのシステムがすべてを解決できるとは思っていません」と槇島氏は言う。
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