「AI運行バス」は社会の隙間を埋められるのか 横須賀の実証実験で乗ってわかった利便性

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「自治体任せではなく、いかに地域の方々が、自分たちで支え合っていけるかが重要です。そうした中の選択肢のひとつに、AI運行バスがあります。もしかすると、地域によっては路線バスのほうがいいかもしれません。ただ、地域住民の移動問題を解決する助けになるものにしなければいけないと思っていて、乗車効率を上げることや協賛金を得やすい仕組みづくりに取り組んでいます」と槇島氏。

帰りに利用したAI運行バスは、車いすの人も利用できるミニバン型。ドライバーは「流しの客を探さなくてよいのは気楽。何度も利用するお客さんとは顔なじみになった」と言う(筆者撮影)

そんなAI運行バスの実証実験は、2月24日に終了となった。今回の実証実験の結果はまだ集計中だが、開始からわずか1カ月でAI運行バスのアプリのダウンロード数は1000に達したという。約2000世帯の地域の中で、だ。

利用者数は、2月上旬で1日当たり平均70名に達している。予約の90%がアプリからというのも特徴的だ。

利用者に実施したアンケートを見ると、約49%が「行動が活発化した」と言い、約98%が「移動障壁が低くなった」と答えている。

サービスとの連携でマネタイズを図る

取材の仕上げは、スーパーでのクーポンの利用だ。今回のAI運行バス利用と1000円の買い物を合わせることで、スーパーからは「黒胡麻せんべい」1袋がプレゼントされる。

実際に使ってみれば、路線バス並みの料金でタクシーのような利用ができるAI運行バスは、非常に便利な交通サービスだと感じられた。しかし、利用者はいいけれど、運用側がつらくては「絵にかいた餅」になりかねない。路線バスよりは安いとはいえ、最低でも運転手の人件費ぐらいは儲からなければ話にならないだろう。

そこでポイントになるのは、サービスとの連携でいかにマネタイズを行えるかである。もちろんNTTドコモは、そのあたりも重々承知しているようで、AI運行バスのアプリを活用した地域店舗のための集客サポートツールの開発に余念がない。

地味ではあるが、“生産性の高い移動手段”と“新たなビジネスモデルの創生”という難問の答えに肉薄しつつある。それがAI運行バスだ。

移動のニーズはあるけれど、路線バスを設定するほどのボリュームがない。そんな地域は日本中いたるところにある。そこに少数のAI運行バスを配置できれば、利用者のメリットは大きい。期待の大きい次世代モビリティだろう。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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