「ノルマ達成」でも、なお厳しい財政再建 14年度予算、基礎的財政収支は5.2兆円改善

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15年度予算に向け、求められる歳出改革

しかし、これに浮かれてはいられない。15年度の財政健全化目標は、今年暮れにも編成される15年度予算でも、収支改善を取り組まなければ実現できない。15年度予算編成は、財政健全化に向けて、決して楽観できる状況にはない。

まず、前述の「中期財政計画」で想定している収支改善には、消費税率を15年10月に10%に引き上げることを前提にしている。消費税率引上げによる税収増がなければ、予定通りの収支改善は実現できず、財政健全化目標も達成できない。

他方、15年度における一般会計の社会保障費は、高齢化の進展で14年度より約2兆円増加することが予想されており、その財源をどう確保するかが問われる。さらに、安倍内閣を支える与党内では、公共事業費と防衛費の増額圧力が極めて強く、15年度予算編成でも看過できない。

 さらに年央にかけて、景気対策を含めた補正予算の編成を期待する声が高まってくるかもしれない。もし今年も補正予算で大盤振る舞いすれば、せっかく当初予算で基礎的財政収支を約5.2兆円改善したにもかかわらず、その効果を打ち消す結果(収支改善幅が小さくなる)になりかねず、今般成立した14年度予算だけを見て喜んでばかりもいられない。

財政健全化は度外視できない。2ページの表にもあるように、国債費(国債の元利払い)は、国債金利が低下するなか、14年度予算では約1兆円増加する。もはや国債金利の低下による利払費の減少よりも、国債残高増加による利払費の増加が上回る状況である。これ以上財政が悪化すれば、国債費に財源を捻出するために、政策的経費に回す財源の確保が困難になりかねない。

14年度予算は、財政健全化に向けて前進したものの、15年度予算に向けて火種となる歳出増額圧力を抑えることには成功したとは言えず、今後もさらなる歳出改革が求められている。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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