「情熱大陸」が描く“ヒトの素顔”の裏側

情熱大陸プロデューサー福岡元啓氏に聞く

ただ一方で、関係性を良好に保ちながら、あくまでメディアであるということを忘れないということが必要です。ただ仲良くなるだけではなく、時には鬼龍院さんに「今年、残れますか」というような「ナイフ」を出さないといけない。単なる仲良しだと、異様に距離感が近く、プロモーションビデオみたいな映像の変な番組になります。僕はこの関係性を良好にするとは、「ナイフを出せるくらい仲良くなれるか」だと思います。「ナイフ」がないと番組が面白くなりませんから。

取材から学ぶことは多くある

――ご自身が気に入っている回はありますか。

それぞれにいいところがあるので、1作品を挙げるのは難しいです。直近で言うと、女子スキージャンプチームのコーチである山田いずみさんの回などはよかったですね。高梨沙羅選手との関係性がすごく出ていたし、沙羅さんの心の機微が出ていました。それこそ、山田いずみさんと沙羅さんとの距離の取り方は僕自身もすごく参考になりました。情熱大陸という番組は、自分とオーバーラップさせて見る人が多いと思うんですよ。一流の人たちはどうやっているのだ、と。その意味では、「口酸っぱく言わずに見守る」という山田さんのスタンスは、一見、仕事をしていないように見えるけど、実は見守ることこそ仕事だと思わされましたね。

――女優の井上真央さんが取材者となり歌手の小田和正さんを撮影するなど、新しい取り組みもしていますが、今後は。

賛否はありましたが、小田さんを引きずり出したという効果は絶大ですよ。ここ10年間、出てくださいと頼み続けても、出てくれなかったので。そこで井上さんに出てもらうことで、「変わったことやるならば僕も出てみたい」と小田さんも思ってくれたのです。

ほかにも、初の生放送をしてみたり、アプリを作ったりと、新しいことをやるといろいろな副産物も生まれてきます。それに、半年に1度くらい新しい取り組みをしないと、見ているほうも面白くないと思うのです。

テレビ番組もソーシャルメディアをはじめ、いろいろなものが発達していく中で、このままでいいはずがないと思うのです。新しいものを取り入れていく器量をみせていかないと。化石になっては困るので(笑)。そこは老舗だからと「現状維持」をするのではなく、大切な部分は残していくけど、新しいこともちゃんとやる。「今、旬の人」を撮るといって、旬なことやらなければ意味がないじゃないですか。

情熱の伝え方』(双葉社)
福岡元啓ふくおか・もとひろ
1974年東京都出身。早稲田大学法学部卒業後1998年毎日放送入社。ラジオ局ディレクターとして『MBSヤングタウン』を制作後、報道局へ配属。神戸支局・大阪府警サブキャップ等を担当、『TBS報道特集』など制作の後、2006年東京支社へ転勤。2010年秋より『情熱大陸』5代目プロデューサーに就任し、東日本大震災直後のラジオパーソナリティを追った「小島慶子篇(2011年4月放送)」、番組初の生放送に挑戦した「石巻日日新聞篇(2011年9月放送)」でギャラクシー月間賞。

(撮影:今井 康一)

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