「情熱大陸」が描く“ヒトの素顔”の裏側 情熱大陸プロデューサー福岡元啓氏に聞く

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歌手のクリス・ハートさんの回でも、「本当に日本が好きなのか」というテンションの切り口で密着するようにしてほしいと、取材するディレクターに言いました。だって、あんなに日本語がうまくて、いい声で、善人みたいなことを言われても、ちょっと気持ちが悪いじゃないですか。そういう映像を延々と見せられても、面白くないし納得できない。だから、これまで出ていない彼の違う側面を映し出したかったのです。

いざ取材を始めてみると、日本人の奥さんのキャラクターがいいし、鹿児島県に住む奥さんのご両親も「最初は驚いたけど、手を握ったら温かかったから、いい人と思った」という温かい人たちだった。国際結婚をして、奥さんの実家に帰り、お墓参りをするところを密着することで、そういう人たちとのかかわりの中にいるというバックグランドが見えた。このバックグランドがあるから、今のクリスさんがある――と。だから、奥さんが目立つ編集にしたのです。

やっぱりみんな、“もやっ”と思っている部分があると思うのです。鬼龍院さんだったら「今年で消えるだろ」とか、クリスさんだったら「本当に日本が好きか」ということを。これだけテレビでやらせが起きているとか、プロモーションだとか言われている中では、核心を聞かなければダメだと思うんです。

「星野源という男がわからない」とした理由

――歌手・俳優の星野源さんの回では「星野源という男がわからない」というナレーションが印象的だったのですが、最初からそれを狙ったのですか。

それはないです。わかろうとしました。ただ、星野さんの「内に秘めた情熱」のようなものがいくら撮れども見えてこなかった。隠しているわけではなく、「ないですよ」という。最後に日本武道館のライブで終わったのですが、普通は感慨深いじゃないですか。くも膜下出血から復活して日本武道館でライブをするというのは。だけど、星野さんは自然体で「とくに何もないですね」みたいな感じ(笑)。
こういう若者が今受けているんですね。

途中で取材ディレクターから映像を見せてもらった際に、撮影し続けてもこれ以上の”絵”がないと思いました。だから、わからない――としました。それは、作り手側が、何もない映像に拡大な解釈をして、「彼は本当は何々と思っているんだ」「実はこう思っていたはずだ」というナレーションをつけて無理に持ち上げても、上滑りするだけだからです。

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