米民主党が選ぶのはバイデンかサンダースか スーパーチューズデー後の指名争いの行方

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もともとの誓約代議員数でバイデンがサンダースを下回っていたにも関わらず、党大会でエスタブリッシュメントがバイデンを勝たせたということになれば、その後の党内分裂の危機も想定される。このような党内対立の事態に発展すれば、11月大統領選ではサンダース支持者が投票所に足を運ばず、トランプ大統領の再選を許すことが想像できる。

もう1つはバイデンがサンダースを上回るも過半数の誓約代議員を獲得できず相対多数で党大会にもつれ込むケースだ。その場合、1回目の投票で決まらなくても、2回目以降で特別代議員などの支持を受けて、問題なくバイデンが指名されることが予想される。

いずれのケースも撤退した他の穏健派候補の誓約代議員の協力やエスタブリッシュメントが多い特別代議員の2回目以降の参加によってバイデン有利の流れとなる運命にある。そのため、サンダースは党大会にもつれ込むことだけは、避けなければならない。また、民主党指導部も11月大統領選への影響を考慮し、党内分裂の危機を回避するためにも、競争による党大会とならないよう調整を図るであろう。

4月末には結果が見えてくる

スーパーチューズデー実施前に民主党エスタブリッシュメントがバイデンに一本化するようほかの候補者に働きかけたように、再び圧力がかかることは必至だ。党大会へもつれ込む状況はメディアや政治アナリストが常に夢見る展開であるが、候補者がバイデンとサンダースに絞られてきたため、「競争による党大会」には至らない可能性が高まっている。

バイデンもサンダースも欠陥はあり、民主党有権者の目にはリスキーな候補者と映っているだろう。だが、エスタブリッシュメントは明らかにバイデンを推している。「ジョーメンタム」の強風が吹き、今後、不利な州での戦いを迎えるサンダースは、バイデンよりも本選で勝てる候補として、より幅広い民主党支持層にアピールすることができるかがカギとなろう。

ニューヨーク、ペンシルバニアなどの大票田の予備選が行われる4月末で、9割弱の誓約代議員が選出される。その時点までには、バイデン、サンダースのいずれかが誓約代議員数の過半数を獲得しているか、あるいは決着が党大会にもつれ込むのかが見えてくる。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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