セパージュ時代の到来(4)絶頂:国際展開《ワイン片手に経営論》第18回

セパージュ時代の到来(4)絶頂:国際展開《ワイン片手に経営論》第18回

1993年は、ロバート・モンダヴィにとって記念すべき年でした。株式公開(以下、IPO: Initial Public Offering)を果たしたのです。モンダヴィは、それまで何度もゴールドマン・サックスからのIPOの提案を断ってきたといいます。モンダヴィは父チェザレーから、「大家族を思いやる精神」を受け継いでおり、株式公開したら、この精神が消え去ってしまうのではないかと恐れたのです。しかし、一方で、変貌を遂げる世界経済の波を敏感に感じ取り、次のような言葉も残しています。

 「時代は変化している。もし我々が時代の変化に乗って行かなければ、すべてを失うことになってしまう」

 しかし、株式公開を果たせば、必ず時代の変化に乗っていけるというわけではありませんし、すべてを失わないという保証もありません。大規模な資金獲得の見返りとして、大きなリスクも発生します。常に成長し大きなキャピタル・ゲインへの期待に応え続けるか、さもなければ一定の配当金を支払い続けるか、いずれかの資本主義の大前提に正面から向き合わなければならないということです。しかも、市場からは四半期ごとに成長のチェックが行われるのです。

 ワイン業界自体は、世界全体で見たときに、常に成長しているわけではないという現実があります。規模が拡大しているときもあれば、縮小しているときもありました(Fig.1)。つまり、ワイン業界というのは、常に成長を期待する資本主義市場と必ずしも整合しない市場特性を持っているということです。

 また、必ずしも大きな成長をしていなくても、安定した配当金の支払いで投資家の期待に応える方法もありますが、ワイン業界は設備産業で大規模な投資が必要ですし、かつ天候リスク、害虫リスクを考えると内部留保はいくらあっても安心できません。また、ワインは収穫するまで1年、さらに熟成に数年かかるため、投資が収益となるまでの期間は3年から5年はかかると考えるのが通常ですので、安定した配当金の支払いというのも、かなり苦しいはずです。

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