金融緩和よりも、株価に効く政策がある 山崎 元が読む、ちょっと先のマーケット

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ところで、先般、日銀の黒田総裁は法人税率引き下げに消極的な発言をした。ここには、彼の出身母体である財務省寄りの立場を見ることができる。これまでの、消費税率引き上げへの賛成、財政規律の強調、法人税率引き下げへの反対、などを並べてみると、彼は、消費税率引き上げの側面支援のために金融緩和政策を実行しに日銀に来たように思えてしまう。

法人税率の引き下げは、恒久的な財源が減るので、財務省をはじめとする官僚組織にとっては使える予算が減ることを意味するので、歓迎されないだろう。法人税の減税は、行われない可能性があるし、行われても小規模、あるいは時限的で、官僚にとって好ましい複雑な仕組みのものになるのではないか。

法人税の恒久的な税率引き下げが行われるなら、企業の純利益の期待値を将来分も含めて直ちにアップすることになる。株価には効くはずだし、間接的だが、オフィス物件を中心に不動産価格にもプラスだ。

法人税減税は「成長戦略」のカテゴリーで語られる政策だが、株価に対して短期間で効果を及ぼすことができる政策だ。筆者は、法人税率引き下げが最もいいと思う。税率をシンプルかつ大幅に引き下げるのがいい。

投資家の立場で評価すると、妙味が大きいのは?

さて、投資家の立場で、本命、対抗、穴馬、を評価してみよう。これらの手が打たれた場合、あるいは、「出そうな」場合に、どう評価したらいいか。

まず、主に公的年金資金を使った株式・外貨の買いは、短期的な効果とインパクトを持つ公算が大きいが、効果は一時的なので気をつけるべきだ。「買い」に勢いがある間は逆らいにくいが、投資家は、基本的に「ありがたく、売り場を探す」というスタンスがいいと思う。

株価は「買えば上がる」が、株式の価値、したがって企業の価値が上がるのでなければ、株価の上昇は続かないし、上昇分は遠からず剥落する。理屈だけでなく、1990年代には、公的年金を使った株価対策が何度も行われ、市場では「株価PKO」(Price Keeping Operation;国連PKOにちなんだ呼び名)と呼ばれていたが、その結果がそのようなものだった。愚かな大規模実験で経験済みの現象だ。他に好材料がなければ、上昇は続かないので、騙されないように気をつけてほしい。

日銀の追加緩和が大規模に行われるなら、円安を通じた株価の上昇がある程度は期待出来よう。株価にどこまで効くかは、円安への効果による。10円の円安があれば、日経平均で3000円くらいの上昇が見込めよう。

法人税率の引き下げは、現段階では、最も効果的で望ましい政策だと思えるが、実現の可能性は、残念ながら高くなさそうだ。仮に大幅な引き下げが実現するなら、即効性と将来性が両方ある、大きな買い材料となりうる。

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