金融緩和よりも、株価に効く政策がある 山崎 元が読む、ちょっと先のマーケット

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さて、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用内容見直しを通じて、株式及び外貨資産の買いを発生させ、株高と円安に誘導する政策は、はっきりいって「筋悪」だが、実現する可能性が小さくないように見える。

「実弾」は、ある

昨年4月に発表された「異次元緩和」のパッケージに入っていたETF(上場型投資信託)を通じた国内株式の買い入れは1兆円だったが、GPIFの運用は、資産の1%の配分を変えるだけで1兆2000億円の売買につながり、さらに、共済年金や厚生年金基金の買いを合わせると、その1.5倍くらいの効果がある。運用の見直し作業は現在進行中であり、先般その前提となる政府の長期経済見通し(通称「経済前提」)が出た。

第1四半期の経済推移を見て、GPIFの運用の基本方針を変えて株や外貨を買う可能性もあるし、そもそも運用方針自体の規制が緩いものなので、方針変更に先立って相当額の株・外貨の買いを入れてくる可能性もある。日銀が買い入れなくても、「実弾」となる買い資金はあるということだ。

日銀が、長期国債の買い入れ額を増やす可能性もある。こちらは、金融政策としては、ある意味ではオーソドックスだ。黒田総裁が用意している次の手はこれかも知れない。ただし、国債の新規発行額全額に相当する額を日銀が買い入れることになるので、日銀内部に抵抗感があるかもしれない。実現可能性は微妙だ。

法人税率の引き下げは、政治的には、「消費税率引き上げで庶民に増税する一方で、企業と資産家(株式を持っている)を優遇するのか」との非難を浴びそうだが、しばらく国政選挙がないので、不可能ではない選択肢だ。
 増税による悪影響を緩和するために減税する、というのは、ある意味では「変」だが、筋が通っている。これは、もともと今の時期の増税が不適切だったということなのだ。

次ページ「穴馬的存在」の法人税引き下げだが・・
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