江頭が「嫌われ者から人気YouTuber」になれた訳

登録者170万超え「嫌われ芸人」も過去の話

江頭や出川が最も嫌われていたのは1990年代である。テレビ業界が最も景気がよかった時代だ。バブル景気のピークは1980年代後半だが、その後もマスコミ界隈ではしばらく景気のいい時期が続いていた。テレビの視聴率はよかったし、CDも売れていた。

そのように世の中全体が上向きになっている時代には、人々は感覚を重視して即物的な判断をする。だから、江頭や出川のように、裸になったり、体を張った芸をする嫌われ役の芸人は、そのまま嫌うというのが当たり前の反応だったのだ。勝っている者が認められ、負けている者は見下される。そういう時代だった。

ひるがえって、今はどうだろう。「失われた20年」を経て、日本の経済は長期低迷を続けている。超高齢社会に突入し、景気がよくなる見込みはまったくない。そんな時代だからこそ、お笑いや芸人に対する世間の見方も変わった。

出川はその素朴で優しい人柄が評価され、今では子どもたちのヒーローになった。今の人々は、見た目や声質だけで芸人を気持ち悪いと思ったりはしない。その奥にある内面を見ている。出川という芸人の芸に対するピュアな気持ちが、改めて評価されるようになってきたのだ。

江頭に対する人々の評価が少しずつ変わったのもこれに似ている。これまでのテレビの世界では、江頭は一種の「飛び道具」として使われていた。不特定多数の人が見るテレビの世界では、江頭の過激な芸風は理解されにくい。その過激さは、スパイスとして番組の中にほんのちょっと取り入れるぐらいがちょうどいい、と考えられてきた。

『めちゃ×2イケてるッ!』『アメトーーク!』『「ぷっ」すま』などの番組では江頭がたびたび出ていたが、出演時間はごく短いものだった。

「ネット上の伝説」と化した江頭

だが、インターネットが普及してから、江頭の行動はたびたび世間を騒がせるようになった。オリンピックを現地で観戦したり、東日本大震災の被災地に救援物資を届けに行ったりしたことが、ネット上で伝説として語られた。テレビではかき回し役にすぎなかった江頭が「実はすごい人なのではないか」という風潮が少しずつできてきた。

「ワンクールのレギュラーより1回の伝説」という江頭の有名な言葉がある。彼は安定した地位を得るよりも、人々に強い印象を残すことにこだわっていた。そのこだわりは、これまでの時代には不利に働いていた。レギュラー番組を持っていない芸人は自動的に「売れていない芸人」と見なされていたからだ。

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