安倍首相が守ると宣言した「子どもたち」の被害はどうなっているのか。全世界の新型コロナウイルスによる死者のなかに、学童の死亡はなかなか見つけることができない。WHOの中国での調査報告書でも、19歳未満の感染者は全体の2.4%で、うち重篤な症状は0.2%にとどまっている。子どもには感染しないのではなく、感染しても軽症ですんでしまうのだ。
安倍首相は、科学的な判断よりも、政治的な判断を優先したと言われるゆえんが、ここにある。
休校要請によって影響を受けるのが、医師や看護師、薬剤師、ヘルパーなど医療機関・施設の担い手だ。共働きや父子・母子家庭にとって、学校は働くうえでの土台となっている。子どもを預けるところがなくて仕事ができなくなる医療従事者がどれだけいるのか、想像もつかない。すでに人員のやりくりができずに、外来診療を制限している病院も出てきているようだ。
医療機関がスタッフ不足なら修羅場に
このまま感染が拡大すれば、医療機関はスタッフが足りず修羅場になる。医療水準は確保できす、武漢市のように助けられる命を助けられない事態が生じてもおかしくない。高齢者世帯に通うヘルパーだって、子どもの学校の休校によって仕事ができなくなる人もいて、ネットでは不満がくすぶっている。
安倍首相は、「桜を見る会」の問題や東京高検検事長の定年延長問題で強い批判にさらされ、さらにはクルーズ船での検疫や感染防止では海外から批判を浴びた。首相にとって、休校要請は威信を取り戻す窮余の一策だったのだろう。
その安倍首相、2月29日の記者会見で、「これからも先頭に立って成すべきことは決断していく」と高揚した面持ちで決意を表明したが、3月2日の参院予算委員会では、いつもの感情的な物言いは影を潜めていた。これほどの反発を受けるとは、想像もできなかったのか、あるいは別のシナリオができている余裕の表れか。
もはや休校要請を取り消すことはできないだろうが、まず手を差し伸べるべきは高齢者であり、そのためには医療機関の体制を死守すること。それは、いまからでもできるはずだ。
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