前田道路社長が激白「建設よ、もう1度考え直せ」 巨額配当とNIPPOとの提携に踏み出した真意

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――できるだけ早く提携の内容を詰めるとのことですが、どの程度の時間軸を考えているのですか。

今回の事例は投資家も見ている。われわれも明言したいが、話し合いは始まったばかりだ。とはいえ、1~2年以内に答えを出さないと、株主の目線に立っていると言えないだろう。

――投資ファンドと組んだMBO(経営陣の自社買収)などを選ばず、事業会社であるNIPPOを提携先に選んだ意味は何ですか。

前田建設の当社に対するTOB価格は3950円(発行済み株式数8916万株で単純に計算すると、評価額は総額3522億円)。MBOするならば対抗プレミアムを含めて4000億円近い金額が必要だ。

数年後に投資ファンドが出口戦略をとった後、当社には売り上げと同額ぐらいの莫大な借入金が残る。それを次の世代に残すわけにはいかない。

前田道路の一番の魅力は「ヒト」

――前田道路は無借金経営で、毎年100億円近いフリーキャッシュフローを生み出す力があります。返済できない金額ではないように思えます。

ヒト・モノ・カネという経営資源の中で、当社はカネも持っているけれど、一番の魅力はヒトだ。当社がこの規模まで大きくなったモチベーションは「前田建設の子会社だから」ではない。

2月27日の記者会見で握手をするNIPPOの吉川芳和社長(左)と前田道路の今枝社長(右)(撮影:大澤誠)

それがファンドの傘下に入ったり、前田建設の子会社になったりしたら、モチベーションが落ちて、今の企業価値を保つことはできなくなる。借入金も返せなくなるかもしれない。

実際、労働組合の取ったアンケートでも反対意見が出た。協力会社の賛同も得られない。そうなると、本当の企業価値がなくなる。

――前田建設は「資本の論理」で前田道路の支配権を取ろうとしています。前田道路も上場しているからには、資本の論理で抵抗する必要があると思いますが、NIPPOとの提携は対抗策になりえるのでしょうか。

NIPPOとの提携は多少の影響はあるかもしれないが、対抗策にはなりえない。資本の論理で不利なのは重々承知している。

【2020年2月28日12時27分追記】初出時の記事で「NIPPO」の表記が誤っておりました。お詫びして修正いたします。

――2月20日に発表した特別配当650円で純資産を圧縮し、前田建設側がTOBを撤回することも可能になりました。これは対抗策なのですか。

そもそも対抗策をとっているつもりはない。もう1回考え直してください、それが特別配当だ。

随分昔から、前田建設と資本関係を解消するために内部留保を積み上げてきた。今回は提携解消のために、自社株買いをする予定だったが、前田建設が売ってくれないから直接配当で株主への還元策に変えた。それがTOBの撤回要件に当たるから、「もう1度、踏みとどまって再考してくれませんか」ということだ。

繰り返しになるが、(強引に子会社化をすれば)人材の流出が起こる、前田建設の株主のためにもならない。NIPPOとの資本業務提携は企業価値を高めるには良い方法だ。

どういう選択が良いのか、前田建設には1回踏みとどまって考えて欲しい。そのために臨時株主総会を開催する。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と2人の娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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