さて前回は非合理な行動をとるノイズトレーダーの話をしたが、投資家が非合理的な行動をする、つまり、馬鹿な行動をする場合には3つのケースがある。
投資家が馬鹿な行動をする3つのケースとは?
第1に、その人が本当に馬鹿な場合である。もともと合理的でないから合理的に行動することができない。例えば、ある銘柄を有望と思ってしまうが、その銘柄の良さはすでにみんな知っていて折り込み済みなのに、それに気づかず高値で買ってしまう場合などである。
第2に、目的関数が異なる場合である。リターンの最大化よりも、資金を預かって運用している場合には、預けてくれる出資者の満足を最大化する(あるいは不満を最小化する)ことである。出資者に文句を言われなければ良いのである。運用の場合は、バブルなどのときは、リスクに気づかない、リスクを過小評価する顧客が多いから、リスクを承知でバブルに突っ込むことになる。一方でバブル崩壊後は、いまこそチャンスなのに、顧客(委託者)はリスクに怯えているから、とにかくリスクを最小化する運用が求められる。
第3に、制約条件が厳しく、最適化したとしても「目的関数を最大化しているように見えない場合」である。外からは制約条件がどれほど厳しいのか、どのような制約条件があるのか見えない場合は、実際は制約条件に縛られて動けないのに、傍から観ると何もしていない、努力不足、やる気がないように見えるのである。例えば、GPIF(年金積立管理運用独立法人)などの場合は、内部者にしか分からない政治的な制約や、年金関連の法律の制約がある場合である。
これを、今回の新型肺炎に対する政府の対応に置き換えてみよう。とりわけ、大型客船の内部で、政府関係者がベストの選択肢を取っていないように見える、パフォーマンスが悪く見えるのはなぜか、について考えるとき、この3つのどれに当てはまるか、を考えることは示唆に富む。
ナイーブな人々やメディアは、第1のケースだと、何も考えずに反応してしまっている。そうであれば大きな問題だが、現実の社会でそういうことはほとんどない。彼らは何らかの専門家集団であるからである。
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