この理由は明快だ。インフルエンザには慣れてしまって、かかったことがある人も多いし、周りで必ず誰かがかかっているから、そう簡単に死ぬわけではない、悪いシナリオでも想像できる、あるいは確信出来る、ということが不安を限定的にしている。また、いくつかの薬があることも大きい。インフルエンザには薬があるが、新型肺炎にはまったく薬が効かない、という言葉が恐怖を倍増させている。
ただし、インフルエンザの薬だって特効薬ではなく、治るまで4-5日苦しむところを、2日程度に限定してくれる、というだけのことだ。政府が出した新型肺炎に関する医療機関受診の目安が4日間様子見であるのに対し、「インフルエンザだったらどうするんだ、インフルエンザの薬は最初の2日間しか効かないじゃないか」、と騒ぐ人々がいたが、それは3日目に飲んでも、飲まないのと回復する期間が変わらないから、飲むだけ損だ、というだけのことだ。
なぜSNSやメディアは恐怖を拡散、増幅させるのか?
さて、SNSやメディアがこの恐怖を拡散、増幅させるのはなぜだろうか。批判を承知で言えば、彼らの多くは騒ぐのが目的なので、騒ぎになれば、ある意味何でも良いのである。話題になり、自分の投稿あるいは記事が引用されたり、拡散されたりすればハッピーだから、人々の恐怖感を目ざとく見つけたら、それをとにかく徹底的に煽るのである。
これは社会を不幸にするだけの行為だが、意外と世間から批判も受けないし、ただの煽りだと後ほど判明しても、責められない。要は、人々は忘れてしまっているので、批判することもないのである。だから、ノーコストで暇な人々は、自分の安全を確保した上で、自分と無関係な事件や恐怖をことさら書き立てる。昔は井戸端会議がこの役割を担っていたが、現在ではこの影響は匿名性を持って広がるから、彼らにとっては、快感は倍増しているだろう。
一方、そこまで悪意がなくとも(無意識の悪意もなくとも)、むしろ親切心で人々の恐怖を煽る場合もある。本当に心配して徹底的に対策をする。そして、自分の仕入れた怪しいネット情報を親切心からアドバイスとして友人、知人に触れ回る。始末が悪いのは、それがSNSなどで無限の連鎖で広まるのが現在だ。ただ、悪意があるものよりも、こちらの方が真実味があり、切迫感が本人にもあるから、周りも信じやすくなってしまうから、こちらの悪影響も大きい。
例えば、メディアが何かと「政界再編の可能性、衆議院解散の可能性」と騒ぎ立てるのも、要は同じことで、政治記事は常にネタ不足だから、わかりやすいネタを常に作り上げる。ただし、これにはわれわれも慣れているから、繰り返される「ワンパターンの煽り」は被害が少ない。だが、新型肺炎は、初めての出来事だから、煽りの被害は大きくなる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら