BMWはかつて、FR(後輪駆動)のクルマしかつくらない旨を公言し、実際にずっとそれを守っていた。
コンパクトハッチバックのエントリーモデルとして2004年にラインナップに加わった「1シリーズ」も2代目まではクラス唯一のFR車で、そこに共感するファンは少なくなかった。とくに日本では。FRだからこそ、1シリーズを選んでいた人も少なくない。
ところがBMWは、方針を転換した。まず「2シリーズ」の「アクティブツアラー/グランツアラー」というMPV(マルチ・パーパス・ビークル)に、傘下にある「MINI」のFF(前輪駆動)のプラットフォームを流用した。それが2014年のこと。
次いで、初代はFRだったSAV(=スポーツ・アクティビティ・ビークル)のエントリーモデル「X1」も、2015年に2代目にモデルチェンジする際にFF化した。その派生モデルの「X2」もFFで登場。そしてこのほど、3世代目を迎えた1シリーズも同じくFFとした。さらに、「2シリーズグランクーペ」も同様で、FFのBMWは着々と増殖中だ。
なぜBMWはFFを採用したのか?
理由はいたってシンプルで、言うまでもなく後席の居住性や荷室を広く確保できるからだ。1シリーズの場合、このカテゴリーは実用性を求めるユーザーが多く、逆に駆動方式にこだわるユーザーはそれほど多くない現状を受けてのことだという。表立っては言及しないが、コストダウンを図るうえでもFFのほうが有利であることも、裏テーマとしてあることは想像に難くない。
実用性が高いに越したことはないとして、日本ではこだわる人の少なくない駆動方式に、欧州のユーザーは意外と無頓着のようだ。調査によって、せっかくBMWが後輪駆動を採用していたのに、あまり共感を得られていなかったことが判明したと言う。
むしろ実用性を高めることでフォルクスワーゲン「ゴルフ」やメルセデス・ベンツ「Aクラス」、アウディ「A3」など同じ土俵に上がることのほうが大事で、メリットを生かすよりも、デメリットをなくすほうを選んだわけだ。
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