日本政府の試算では、公債等残高の対GDP比は、2018年度には192.1%ですが、2028年には、成長実現ケースで157.8%、ベースラインケースで190.0%に低下するとされています(出所:「中長期の経済財政に関する試算」2020年1月)。
しかし、2020年報告書は、このようなことは、実現できないというのです。
そして、具体的な政策を提言しています。
まず、消費税率を2030年までに15%に、さらに2050年までに20%へと段階的に引き上げること。
このほか、下記のような政策を提言し、年金・医療分野の社会保障改革が「不可欠だ」としています。
政策の効果は?
これらの政策の効果は、次のとおりと予測されています(数字は、2030年における公債等残高の対GDP比の減少幅)。
・医療制度の改革 2%未満
・富裕税の導入 0.3%未満
・炭素税の導入 0.2%
・社会保障費以外の経費の抑制 1%未満
(合計) 6%未満
この表を見ると、効果があまりに小さいのに驚くでしょう。
しかし、次のように考えれば納得できるでしょう。
消費税率引き上げによる効果については、次のとおりです。
2019年10月の8%から10%への税率引き上げによる増収は、5.6兆円と言われました。したがって、5%なら14兆円ということになります。
これは、GDPに対する比率で言えば、将来のGDPを600兆円として計算すれば、2.3%でしかありません。
しかも、消費税増税分のすべてを国債減額に充てられるわけではなく、また将来の早い時点で増税できるわけでもないので、上記のように「効果が2.5%未満」となるのは当然なのです。
他方で、2030年の公債等残高の対GDP比は250%を超すというのですから、それに比べ2.3%は100分の1未満でしかありません。消費税増税は「焼け石に水」ということになります。
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