この結果が、2018年論文のFigure 1. Japan: Impact of Demographic Projections(P5)に示されています。
ここに示されているのは、2012~2017年の成長率が続いた場合に比べて、どの程度の変化があるかを示したものです。
実質GDPについては、その影響は年次が経つにつれて拡大し、2057年には、25%ほどの下振れとなります。
こうなるのは、直接的には、若年層人口の減少によって労働力人口が減少するからです。ただし、それだけではなく、労働力人口の減少によって資本ストックが減少することも影響します。
これは、2012~2017年並みの成長率を維持できた場合に比べると、年率成長率が0.8%ほど低くなることを意味します。
実質GDPの2012~2017年の平均成長率は年率1.3%だったので、結局、今後の実質成長率は1.3-0.8=0.5(%)ということになるのです。
なお、上記のFigure 1.を見ると、1人当たりGDPは、2057年で13%ほど下振れすることになっています。
これは、年率でいうと、マイナス0.4%程度になります。
2012~2017年の実際の成長率は1.42%だったので、今後の1人当たり実質成長率は、1.42-0.4=1.02(%)ということになります。
1人当たりGDPが減少する理由
1人当たりGDPが減少するのは、一見すると不思議な現象のようにも思えます。
こうなるのは、高齢化が進展すると、労働生産性と労働時間が減少するからです。
2020年報告書は、日本の財政収支問題を取り上げています。
社会保障費の拡大に歯止めがかからないため、財政面での課題がより困難になるとしています。
さらに、前提となる経済成長率に関して、財政健全化のためには「現実的な試算が役立つ」とし、2%程度の高い実質経済成長率を前提とする日本政府の見通しに疑問を呈しています。
そして、成長率を0.5%程度として試算しています。
報告書は、信頼性のある見通しが必要だとしています。
なぜなら、それによって、政策の不確実性を減らせるからです。そして、それによって投資を増やし、予備的貯蓄を減らせるからです。
まったく、そのとおりです。
2020年報告書は、成長率が0.5%である場合には、日本政府が見込むような税収は確保できず、GDPに対する公債等残高の比率は、2030年には250%を上回るとしています(出所:「2020年報告書」のp.20にある図 Japan:Gross Public Debt Under Reform Scenarios)。
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