松嶋菜々子、挫折から始まった28年の仕事人生 長く働く秘訣は、目の前に集中すること
「CGではなく人間が演じる意味は何か、その中で自分にしかできないことは何か、それはどうしたらできるのか……。そういうことについて意識するようになりました。
まだはっきりと答えは出ていないけれど、それでも大事だと思うのは、目の前にいる人から『ほかの誰でもなく、あなたに仕事をお願いしたい』と言ってもらえるような仕事を重ねていくことなのではないかと」
プライベートでは二児の母。「あなただからこそ、この仕事をお願いしたい」と言ってもらえるような仕事をすることの重要性は、子どもたちにも説いているという。
20代の自分に、「なりたい姿」なんてなかった
女優業を始めたのは1992年。それから松嶋さんは、プロとして着実にステップアップを続けてきた。
けれど、「もともと女優志望ではなかったんです」とデビュー当時の気持ちを明かす。
「昔から、キャリアに対して貪欲なタイプでは全然なくて。5年先にこうなっていたいとか、10年後には何がしたいとか、目標をしっかりとは考えていませんでした」
では、そんな彼女がここまで仕事を続けてこられた理由は何だったのだろうか。
「自分が将来どうなりたいかはわからなかったけれど、いただいた役に対して誠実に向き合いたいっていう気持ちはすごく強かったですね。
だから、台詞を覚えるにもただ暗記するだけじゃなくて、台本を自分なりにしっかり読み込んで、『台詞に込められた意図』を一つひとつ考えるようにしてきました」
なぜこのときに、この言葉なのか。この台詞はいったいどんな感情から生まれてくるものなのか。
納得できないときには、監督に対して質問を重ねることもあった。