松嶋菜々子、挫折から始まった28年の仕事人生 長く働く秘訣は、目の前に集中すること
「ただ台本を読み上げるだけっていうのは嫌だったんです。
『台本に書かれているから』『監督に言われたから』って、本当は自分の理解が追いついていないのに、わかったような気になって偽ることも。
それだけは絶対にしないと決めていました」
仕事の世界で“代えがきかない人”としてのポジションを確立するのは、とても難しいことのように思える。でも、松嶋さんがやってきたのは、何も特別なことじゃない。
自分の違和感に蓋をせず、目の前の仕事に妥協せず向き合ってきただけだ。
しかしそれが、「あなたに仕事をお願いしたいと言ってもらえる人になるための、着実な道だったのだと思う」と松嶋さんは話す。
“顔の見える人”たちの期待に応えたい
出演するドラマは常に高視聴率。「視聴率の女王」の名を欲しいままにしてきた松嶋さんには、20代の頃から大きな期待が寄せられてきた。
ただ、周囲からの期待は時として重いプレッシャーにも変わる。
松嶋さんはこの大きなプレッシャーに、どう立ち向かってきたのだろうか。
「私が意識してきたのは、『全員の期待に応えようとしない』ということ。
ドラマや映画を見てくださっている皆さんには、もちろんいい作品は届けたい。でも、『きっとみんなは、私にこういうことを期待しているはずだ』って勝手に妄想して、自分で自分を苦しめる行為は意味がない気がして」
松嶋さんが目指すのは、あくまで目の前にいる人に「一緒に仕事ができてよかった」と言ってもらうこと。
監督やプロデューサー、共演者、あるいは「あなたにCMに出てほしい」と依頼をくれた企業の担当者など、“顔の見える人たち”の期待にはしっかり応えようと考えてきた。