日本社会はオジサンが作っている、だからオジサンが好き
「日本社会はおじさんが動かしているんですよ。時価総額で上位の会社の社長はおばさんですか? 内閣総理大臣はおばさんですか? 『東洋経済オンライン』の編集長はおばさんですか? みんなおじさんでしょう。法律もマーケットもおじさんが動かしているんですよ。バレンタインデーを仕掛けたのもおじさんです。私は物事を動かせる人が好きなので、ルールを作るパワーがある人に魅力を感じます」
「村岡さん、ファザコンなんですか?」
今回はなぜか口数少なく同席していた伊藤くんが、ここで口を開いた。おじさん嫌いな伊藤くんとしては、反論したくなったのかもしれない。しかし、村岡さんは微動だにしない。
「ファザコンの定義は何ですか? 私は専業主婦の母親の教育方針で『お父さんは偉い』という家庭で育ちました。同じ洗濯機でお父さんと私の服を洗わないで!などと言ったことはないですよ」
再び押し黙る伊藤くんに同調するわけではないが、僕もおじさんは苦手だ。自分も完全におじさんな年齢だからこそ、傲慢なほどパワフルでモテる中年男性に、嫉妬交じりの嫌悪感を抱くのかもしれない。敬称に「先生」をつけないと不機嫌になるような男性は特に嫌いだ。
「おじさんたちが作っているルールが、悪いルールだとは私は思いません。それに従って上手に楽しく生きていきたいです。だって、おじさんのルールは簡単ですよ。先生と言ってほしい人には、先生と言ってあげればいいじゃないですか。タダですよ。それでみんながハッピーになれる。女の世界のほうがはるかに複雑。何にパワーが集まるのかがよくわからないので、ルールの見極めが難しいのです」
僕は村岡さんとは逆に、女性ばかりの集団に身を置くほうがはるかに気楽だ。若くて美しい女性ばかりに話しかけるような野暮をしなければ、言葉遣いは適当でも大きな問題は生じにくい。女同士の関係は複雑だとしても、イヌ社会のように単純な上下関係に陥りやすい男同士に比べると、文化度も自由度も高いように思う。もしかすると、僕が異性だから許されているだけで、女同士はもっと面倒くさいのかもしれないけれど……。
「あ、そうかもしれませんね。私は女だから、おじさんたちに許容されているのかも。異質であることは楽ですね!」
笑って同意する村岡さん。この議論から有用な知見が生まれたわけではないが、賢い女性とのおしゃべりはやっぱり面白い。
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