鳩山首相に必要な不撓不屈の魂

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鳩山首相に必要な不撓不屈の魂

塩田潮

 鳩山首相は小沢代表が5月に辞任したのを受けて後任となり、そのまま総選挙に勝って政権を手にした。代表就任の後、4ヵ月の準備期間があったとはいえ、それまでは「次期首相」という自覚はなかったのではないか。

 約10年前に一度、党代表の経験があり、その頃から政策の面でも資質の面でもそれなりに努力して将来の政権奪取に備えていたはずだが、実際に首相となった後の2ヵ月の言動を見ていると、心構えも事前の準備も万全でないまま促成栽培で首相となってしまったという印象がある。
 象徴的なのは沖縄の普天間基地移設問題への対応姿勢だ。総選挙に勝つための作戦、勝って政権を手にした後の舵取り、それに総選挙や政権交代にかかわらず永続的に続く外交関係について、きちんと説明できる一貫した方針を持たないまま政権に就き、立ち往生しているように映る。

 このテーマも含め、現政権の一番の難点は、最高権力者のはずの鳩山首相のリーダーシップの欠如と存在感の乏しさだ。過去の首相と違って、権力者臭が乏しく、率直で対話型の首相という特徴は否定しないが、あまりにも影が薄い。現政権はもともと「鳩山首相の内閣」というよりも「チーム民主党」の色合いが濃い。加えて、小沢幹事長との「政府・与党の棲み分け」体制、実力者総出演内閣の調整型首相、さらに虚偽献金問題を抱える首相自身の弱さなどが影響しているのだろう。
 だが、国民は総選挙で「民主党政権」と併せて「鳩山首相」というカードも選択したのだ。首相はその民意に応えなければならない。

 鳩山首相に小泉元首相や小沢幹事長のような「強い指導者」を求めるのは、無い物ねだりかもしれないが、一つだけ忘れてはならないのは、「実質的最高権力を自ら掌握できない首相は『名ばかりの権力者』で終わる」という歴史の格言である。実質的最高権力を握るには何が必要か。
 目指そうとする政治の「真の敵」と不撓不屈の魂で戦い続けることであろう。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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