「居場所がない子供」の声を17年聞き悟った答え

現代病に苦しむ子供に大人はどう向き合うか

そして愛知県にあるお寺の住職、廣中邦充さん。ここでも寺に泊まり込みリビングのソファで寝ながら密着取材をした。子供たちと一緒にご飯を食べ、いろんな話をしながら取材をする。取材ではあるが一緒にそこでみんなと生活をした。

愛知県にあるお寺の住職、廣中邦充さん(写真:フジテレビ提供)

今回の「日曜THEリアル!・居場所をください~限界密着…壊れていく子供たち~」(2月23日(日)フジテレビ系列で夜8時から放送)は、10年ぶりの「居場所をください」だが、過去の放送回とは少し異なる。

これまで取材班が出会った子供たちはみんな「親の犠牲者」だった。いい学校に行け、いい仕事につけ、と親から押し付けられてパンクして非行に走る子供や、育児放棄や虐待を受け、ぽっかり心に穴が空いたまま非行に走る子供など。子供たちに接すれば接するほど、取材班の中で「大人たちへの憎しみ」は大きくなっていった。

しかし15年前とは子供たちを取り巻く環境は劇的に変わった。今も子供たちが親の愛情を求めているのは変わらないが、今回取り上げる「オンラインゲーム依存」の子供たちの問題は昔にはなかった。まさに現代の病だ。ゲーム依存の子供たちに振り回され、苦悩する親。オンラインゲームが親子の絆をズタズタに切り裂き、家族全員が「暴走する子供の被害者」になっている現場を目撃した。

今やオンラインゲームは近年の不登校の大きな原因になっていて、低年齢化も進んでいる。大人、親、社会はどうこの現代の病に向き合えばいいのか。

これまで「居場所をください」の最大のテーマは「親が変われば子が変わる」だった。元暴走族総長の伊藤幸弘さんの口癖で、いちばん最初に私が彼から教えてもらったことだ。

しかし今回取材した熱血先生の1人、富山にある「ピースフルハウスはぐれ雲」の理事長である川又直さんは「親が変われば子は変わる。でも親は変わらないから子が変わらなければいけない。子が変われば、親に余裕ができて、親が変わる」と言っていた。

共同生活寮である「ピースフルハウスはぐれ雲」を開設して以来、30年以上にわたって不登校と引きこもりの親子に向き合ってきた川又さんの言葉は、取材班の心に深く刺さった。

問題を抱えた子たちにどう大人が向き合えばよいのか

どうすれば子供は変わるのか。取材班が行き着いた答えの1つは「環境を変える」ということだ。これまで17年間の取材で、子供たちが親元を離れ、新しい環境に行くことで本来の自分を取り戻していく姿を目撃し続けてきた。

引きこもりの子供たちを引き出すアウトリーチというフリースクールによる活動が一部批判を浴びているが、膠着した親子関係を打破するには第三者が介入する必要もある。

居場所をなくしてしまった非行少女を一時的にシェルターで保護し、社会更生を手助けする活動をしている元少年院法務教官の武藤杜夫さんも今回取り上げている。シェルターにいる子供たちとは必ず一緒に夕食を取るという(写真:フジテレビ提供)

また、子供を強く叱れない親、大人たち、というのも時代の変化だ。

ゲーム依存で親の言うことを聞かない子供からゲームを無理に取り上げようとすると、親から暴力を振るわれた、と訴える子供もいた。子供のずるさが暴走するさまも今回目の当たりにした。

時に暴走する子供に対して、圧倒的に強い力、というのは必要な場面がある。しかし学校でも家庭でも、暴力禁止の中で、子供たちの暴走は続いている。伊藤幸弘さんの後継者である佐野英誠先生を見ていても、強い父性の必要性も感じられた。

子供たちへの取材については一筋縄でいかないことも多い。取材班としては彼らの声をみんなに聞いてほしい。彼らの声なき声を伝えたい。どうすれば問題を抱えた子たちに大人が向き合えばいいのか。どういう風に愛情を注げばいいのか、どういう風に叱ればいいのか、それらを熱血先生たちの姿を通して番組では描写している。

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