筋肉体操の谷本先生「やり過ぎの運動に潜む罠」

「鍛えれば強くなる」が当てはまらない部位も

NHKの「みんなで筋肉体操」でお馴染みの近畿大学、谷本道哉准教授が「正しい筋肉の鍛え方」を伝えます(写真提供:中央公論新社)
国民総肥満、定年延長が叫ばれる昨今、健康管理と継続的な運動を通じ、70歳まで働けるカラダを維持することはもはや義務とも言えそうな状況にある。一方、人気TV番組出演の谷本道哉・近畿大学准教授の著書『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方-なぜあの人だけが老けないのか?』 によると、運動する人ほど「鍛えればいつまでも元気」という落とし穴にハマりがちだという――

運動をするうえで、「しっかり有酸素」はメタボリスクを強力に抑える合言葉ともいえます。ただし無理は禁物であることも忘れてはいけません。

 有酸素運動は無理がすぎると、極めてまれではありますが、心不全などの致命的な病気を起こすことがあります。

 運動を行った際、心臓のあたりに痛みや違和感を覚えるときは無理せず、すぐに中止しましょう。体調の悪いときは、中止するか強度と量を落とします。また、脱水は循環血の不足から心不全につながりやすいので水分補給は怠らないようにしましょう。

 そしてもう1つ無理が利かないことがあります。それは関節の消耗です。

関節は酷使することで消耗しやすい部位

 体は「筋肉」を使い、「骨」を「関節」まわりで動かすことで動作します。

 このうちの筋肉と骨、実はこの2つは何歳になっても鍛えれば強くなります。しかし関節は、強くならないわけではありませんが、極めて回復が遅く、酷使することで消耗しやすい部位であることをよく知っておく必要があります。

 その理由は、関節内には血管が走っておらず、新陳代謝(構成組織の入れ替わり)が非常に遅いことにあります。新陳代謝が遅いということは、酷使されると回復が追いつかなくなるということ。そして痛めてしまうとなかなか治りません。

 最もよく行われる有酸素運動といえばジョギングですが、ジョギングは着地の衝撃が結構強い、ハイインパクトな運動でもあります。

 着地の衝撃は一般的なジョギングで、体重のおよそ3~4倍。普通歩行の1.5倍程度と比べるとかなり大きいことがわかります。

 ジョギングのような運動を週60分以上行っている人では、週15分未満の人に比べて、膝関節の骨棘(変形性膝関節症の診断指標の1つ)が形成されている人の割合が、3.5倍だったという研究報告もあります。

「鍛えれば強くなる、鍛えていればいつまでも元気で若いときと変わらずいられる」
という話は、関節には残念ながら当てはまりません。

 このことは、よく運動をしている人が陥りがちな典型的な落とし穴といえます。消耗品である関節をいたわり、無理のない運動をするようにしなければいけません。

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